第113話

分岐点⑦
3,655
2019/04/17 12:20


 ーー……。
 一瞬、なにが起きたのかわからなかった。まばたきするのも忘れてしまった。
 頬に触れる柔らかな髪。耳に伝わってくる吐息。
「……ぁ」
 きづけば、私は抱きしめられていた。
「ユゥ……?」
 ふと目に入った投げ出された車椅子。
 ……立ち上がって、ここまで来た……?
「ユウッ、ぇ……、なんで……、ま、まだ立っちゃだめだよっ、傷がまだ」
「ごめん」
 ユウが、間髪入れずに言った。困惑して、首をかしげる。
「え」
「ごめん……こんなになるまで、きみを不安にさせてたなんて気づかなかった。僕が杏奈を追い詰めていたんだね」
「ユ、ユウ?」
「あの夜から考えてたんだ。これで、いいのかなって。杏奈を危険にさらして、君を守ることもできなかった」
「そ、そんなことない。ユウはじゅうぶん守ってくれた」
「中途半端なこと、したくなかったんだ。だから、ちゃんとけじめをつけたかった」

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