ーー……。
一瞬、なにが起きたのかわからなかった。まばたきするのも忘れてしまった。
頬に触れる柔らかな髪。耳に伝わってくる吐息。
「……ぁ」
きづけば、私は抱きしめられていた。
「ユゥ……?」
ふと目に入った投げ出された車椅子。
……立ち上がって、ここまで来た……?
「ユウッ、ぇ……、なんで……、ま、まだ立っちゃだめだよっ、傷がまだ」
「ごめん」
ユウが、間髪入れずに言った。困惑して、首をかしげる。
「え」
「ごめん……こんなになるまで、きみを不安にさせてたなんて気づかなかった。僕が杏奈を追い詰めていたんだね」
「ユ、ユウ?」
「あの夜から考えてたんだ。これで、いいのかなって。杏奈を危険にさらして、君を守ることもできなかった」
「そ、そんなことない。ユウはじゅうぶん守ってくれた」
「中途半端なこと、したくなかったんだ。だから、ちゃんとけじめをつけたかった」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。