避けようと重心を落とした。が、既に拳は視界の前へあった。
想像以上に速い……っ。
裏拳が顔面にめり込む。眼球が衝撃で破裂するような感覚を覚えた。
「ぐはッ……ッッ」
顔面を手で覆い、身を屈めた。脳を揺さぶられたことにより目眩がする。痛みで喉の奥から胃液が上がってきた。思いきり岡田ユウの攻撃を受けた。受けるつもりはなかった。そもそも避けた自信はあった。それでも、思い切りクリティカルヒットした。
「カハ……ッ」
鼻血のせいで、呼吸が乱れる。脈拍が速い。
ーー武器も持たぬやつに、負けるなどあり得ない。
この私が負ける? そんな筈がない。私は強い。強い強い強い強い強い強い強い!!誰よりも。
ーー負けてたまるものか。こいつなんかに……っ。
歯を食いしばった。抜歯した部分から溢れる血液を吐き出すように喚呼した。
「岡田……ァッッッ!!」
ナイフを握りしめる手に力を込めた。風を切るようにして足を踏み出す。間合いを一気につめる。髪をふりみだし、鋭い切っ尖を相手へ突きつけた。けれど、彼は身を翻し避けた。同時に後方へ宙返りし、そのまま金網の上へ。腰の高さまである位置から、私を見下ろすようにして立つ岡田ユウ。なんと超越した身体能力だ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。