ジムへ見学に言った日から一週間後、岡田さんの家へ行くこととなった。彼は迎えにいくと言ってくれたけれど遠慮した。恋人でもないのに申し訳ないと思った。
携帯のナビを頼りに駅から歩く。もう着きそうだというとき、ふとひとつの家が目に止まった。
一際大きな白い家。岡田さんの自宅から斜め向かいにある。なぜか気になって立ち止まった。
立派な家だけど、どこか殺風景に見えるのは人の気配がしないせいだろうか。庭の手入れは行き届いているようだけれど、家の中は見えない。すべてカーテンを閉め切っていた。
……だれも住んでいないのかな。
そこまで考えたところで、要らぬ心配だと気づく。
「って、なに考えてんだろ。人の家のことなんて気にする必要ないのに」
バッグを肩にかけ直すと、向き直った。
岡田さんが家で待っている。エスプレッソマシンで淹れたコーヒーが楽しみだ。インターホンを鳴らすと、すぐに彼が出てきた。
「いらっしゃい。迷わなかった?」
「はい。ナビのおかげで」
「そう。さ、入って」
「おじゃまします」
「どうぞ」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。