ナイフを構えた。けれどまだ、岡田ユウに向かい合ったままだ。
ーー死ね。
「馬鹿め」
そう吐き捨てて、薄ら笑った。そこでようやく岡田ユウが察する。
「まさか……っ」
動揺を含ませた彼の声色。だが、今さら遅い。殺気を岡田ユウから移行させていく。目が合うと同時に彼女が、絶望的な表情を作り上げた。荒い息を吐く。全精力を傾け、三野村杏奈へ襲いかかった。距離にしたら五メートル。
「三野村杏奈!! 死ねっ」
「っ……」
大きく開眼する彼女の瞳。
恐怖の顔だね、杏奈。終わりだよ。
喉元を目がけて、ナイフを突き出したーー。
顔にかかる影。
え……。
驚愕。岡田ユウが目の前にいる。立ちはだかるように、目の前に。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。