そして、楽しそうに笑った。暗い部屋に響く桜子の笑い声。
あぁ、もぅ……痛みで腕も頭もズキズキする。
これ以上の痛みを私は知らない。
「はぁ、杏奈さん虐めたら、なんだか興奮してきちゃった」
ゆっくりとユウに近づいていく。そして、ユウに馬乗りになった。
腕が痛む。けれど、今から味わうのは、恐らくそれを上回る痛みーー。
「ねぇ、杏奈さん。最高のものを見せてあげる」
私に微笑みかける桜子。もう消えてなくなりたい。心からそう思う。
なぜ、私をユウとおなじ部屋に拘束したのか。今、わかった。
「ぁん、ユウっ……気持ちいいっ」
桜子の声。
「……ぁ、たまんないっ」
桜子のよがった顔。そして、ふたりが繋がる光景。見たくない。私はなんども顔を背けようとした。
けれど、叶わなかった。使用人が私の髪をわしづかみにして、無理やり前を向かせる。
「目を閉じるな」
拒むと殴られた。
「ユウ最高っ。ねぇ、お返事して。私の名前、言ってごらん」
すると、ユウの手がピクリと動いた。そして、桜子のせなかに手を回す。
「桜子……ちゃん」
二週間ぶりに聞いたユウの声。けれど、それはやっぱりいつものユウじゃなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。