私を見つめるユウの視線は、愛に満ちていた。
たとえそれが、間違った愛し方だとしても、私を愛しているのには違いない。
半年前、恋人から振られて以来、私は恋愛を避けてきた。
前の恋人は、浮気症だった。どんなに泣いても、恋人は浮気をやめなかった。
浮気する男なんて大嫌い。私だけを愛してくれる人がいい。
そんなことを思っていた。すこしばかり狂気的でも、私だけを見て、私に尽くしてくれる。そんな人がいい。
あれ、それって……ユウのこと?
ーー違う。そんなわけない。
ストーカーに恋するなんて……いくら格好良くても、そんなこと……ない、よね。
艶のある自然な茶色い髪、切れ長の二重まぶた、整った顔立ち。そして、私を見つめるその視線。
漆黒の透きとおった目。その瞳が、私を捕らえて離さない。
「杏奈。好きだよ、だから僕を見て」
そう言って優しく微笑む。
固定具でつなぎとめるのはなぜ? 不安だから? 私を逃がすのがそんなにいや? そんなに……私を愛している?
へんだな。ストーカーから監禁されてるのに、私……どこか安堵してる。
だれかに愛されていたと知ってやすらぎを感じてる。その相手がユウだからかな。
タイプの人だったからかなーー。
私……おかしくなっちゃったのかも。でも、……それでもいいかな。
そんなことを思いながら、眠りにおちた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。