第20話

口渇⑩
13,920
2019/03/29 09:08


 私を見つめるユウの視線は、愛に満ちていた。
 たとえそれが、間違った愛し方だとしても、私を愛しているのには違いない。
 半年前、恋人から振られて以来、私は恋愛を避けてきた。
 前の恋人は、浮気症だった。どんなに泣いても、恋人は浮気をやめなかった。
 浮気する男なんて大嫌い。私だけを愛してくれる人がいい。
 そんなことを思っていた。すこしばかり狂気的でも、私だけを見て、私に尽くしてくれる。そんな人がいい。
 あれ、それって……ユウのこと?
 ーー違う。そんなわけない。
 ストーカーに恋するなんて……いくら格好良くても、そんなこと……ない、よね。
 艶のある自然な茶色い髪、切れ長の二重まぶた、整った顔立ち。そして、私を見つめるその視線。
 漆黒の透きとおった目。その瞳が、私を捕らえて離さない。
「杏奈。好きだよ、だから僕を見て」
 そう言って優しく微笑む。
 固定具でつなぎとめるのはなぜ? 不安だから? 私を逃がすのがそんなにいや? そんなに……私を愛している?
 へんだな。ストーカーから監禁されてるのに、私……どこか安堵してる。
 だれかに愛されていたと知ってやすらぎを感じてる。その相手がユウだからかな。
 タイプの人だったからかなーー。
 私……おかしくなっちゃったのかも。でも、……それでもいいかな。
 そんなことを思いながら、眠りにおちた。


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