第50話

嫉妬⑩
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2019/04/04 13:36


 とにかく心の内を押し殺しているようなそんな風に感じた。空気が張り詰めている。
 ……こわい。
 ただならぬ気配を肌で感じながらようすをうかがう。男の人はというと、驚きもせずユウのほうを見ていた。
「お前だれだよ」
「だれだろうね」
「はぁ? 意味わかんねぇ。邪魔すんなよ」
 私を押さえつける手が離れていく。男の人がユウに向き合った。その手にはナイフが握られている。ユウが怪我するかもしれない。
 ゾッとした。もしかしたら、怪我では済まない可能性だってある。ユウの手に武器らしきものはない。こんな暗闇で防御なんてできるわけない。迫りくる恐怖。
 警察を呼ばないと……。携帯は……あぁ、どこにあるのかわからない。
 身体が震えた。頬を伝う生ぬるい汗。喉はすっかりカラカラになっていた。
 だめ。いや。ユウが刺されるなんて、いやだ。どうしよう。どうしよう。
 後悔しても無意味なのに、それでも、後悔せずにはいられない。軽い気持ちで男の人の誘いに乗ってしまった。いっしょに飲むくらいならいいかなんて、軽はずみにオッケーした。
 そのせいで、ユウが危険にさらされている。なんてことをしてしまったんだろう。
 ユウ、ごめんなさい。ごめんなさい。

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