「ストーカーに感じるなんて、きみも結構いやらしいね」
「ちが……ひどい」
「ひどいのはお互い様だよ。僕はずっときみを遠くから見てた。ずっと嫉妬してた。だから今度は僕の番」
「……ユウ、ねぇ」
「杏奈。僕はきみに嫉妬してもらいたい。もっともっと。だから、ね?」
「嫉妬だなんて……私」
「あ、携帯が鳴ってる。そう言えば、大手取引先の女の人から会いたいってメール入ってたんだった。大事な取引の真っ最中だから、無視できないんだよね。じゃ、杏奈。また後でね」
そう言ってユウが背を向ける。
「ユウ……っまって」
引き止めるも、ユウは行ってしまった。
私はその日あまり眠れなかった。身体が熱を帯びて妙に落ち着かなかった。
それからも監禁生活はつづいた。逃げだす機会をうかがいながら過ごした。その間も、私の頭は疑問ばかりだった。
ユウ、どうしてこんなことをするの? 私のことを愛しているのになぜ? それほどに私を閉じ込めていたいの?ねぇ、ユウ。私はあなたがわからない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。