第178話

うやむや②
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2019/05/07 02:25


 そう言った補足事項を説明した。彼女は頭を抱えた。
「嘘だよね?」
「嘘じゃないよ」
 ほんとうだった。昨日のことをぜんぜん思い出せなかった。結局、杏奈は僕がなにをしたのか言ってくれなかった。
 支度を済ませたあと彼女を職場へ送り届けた。杏奈はうれしそうな顔で、僕に手を振った。
 あれ、なんか妙に明るいような……まぁいいか。
 僕も手を振ると、車を発進させた。
 ……昨日、僕は杏奈になにかしたっけ? もしかして、酔った勢いで杏奈にキスしたとか?
 そうだとしたら、さぞ軽いやつだと思われただろう。けれど、それは間違いだ。僕はいつだって杏奈一筋だった。彼女のためなら、見返りを求めない。なんだってできる。これまでも、そしてこれからもそうだ。
 以前の僕は、杏奈を支配したいという欲念にとらわれていた。常に目の届くところへ置いておきたい。ただもう自分のものにしたい。壊れるほどに愛したい。そう思っていた。けれど、杏奈が僕を好きになってくれて少しだけ変わった。
 監禁。それは愛するがゆえの過ちだったと知った。彼女の意思を尊重すること。自分の気持ちを押し付けないこと。傷つけないこと。大切に想うからこそ、すべてを受け止めたい。とはいえ昨日、自分のしたことには自信が持てない。
 でも、杏奈怒ってないみたいだし……まぁ良しとしよう。あ、そういや。寝室に落ちてた紐……なんに使ったんだっけ?


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