ーーと、ドアがあいた。
振り返る。そこにいたのは、車椅子に乗せられたユウだった。ぐったりと意識のないままのユウ。私は目を見開いた。その場に立ち尽くし動けない。
え、え、……なんで?
ユウは重症。動かしちゃだめ。
なのに、なんで? え、点滴は? たくさんの管は? え、え?
「こんばんは、杏奈さんっ」
聞き覚えのある声。ドアの向こうからひょっこりと出てきた黒い影。
「どうもご無沙汰しています」
と私に声をかける。
そんな…………ーー。
身体が恐怖で震えだす。ユウの車椅子に手をかける人物。それは、桜子の使用人だった。
なんで、……指名手配されているのに……。
言葉を失っていると、使用人が頭に手を当てて微笑む。
「いやぁ、その節はどうもっ、というか記憶とりもどしちゃったんですね、残念です」
卑屈っぽく笑う使用人。
「っ……ァ」
私は驚きのあまり、声が出ない。
「それはそうと、私は彼を殺したつもりだったのに、まだ生きてたなんて。なんてしぶといのでしょう。そういうわけで、もう一度やってきました。三野村杏奈、私は今からあなたと岡田ユウを殺すよ。覚悟してください」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。