毎日の関わりの中で、少しずつユウに惹かれていく自分を自覚していた。確かに監禁されている間にユウを好きになった。
けれど、日を追う毎に彼への愛は私の中で深まっていった。束縛が激しいところを除いては、非の打ち所がないほどに完璧なユウ。
朝起きると彼は、必ずエスプレッソマシーンでコーヒーを淹れてくれた。
「杏奈。コーヒー淹れたよ」
そう言って眠っている私の頬にキスを落としてくれる。朝の苦手な私はコーヒーの香ばしい匂いと、ユウの穏やかな笑顔で目がさめる。
「おはよう……ユウ」
「朝ごはん作ったよ」
「ごめん……私、また寝坊……」
「気にしないで。ほら、おいで」
優しく手を引かれて寝室をあとにする。ユウはいつも落ち着いた表情で私を包み込む。その度に、胸があたたかくなった。
良いところはそれだけじゃない。彼は聞き上手だし話し上手。
数日前、いつものように夕方仕事を終えて彼の家へ行ったときだった。私がちょっと疲れた顔をしているだけで、
「疲れてない? なにかあったの?」
なんて訊いてくれた。
「んー、平気。ちょっとミスしちゃって」
「話聞くよ。相談にものるし」
「……ありがとう」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!