第61話

消失③
5,810
2019/04/07 03:54


 毎日の関わりの中で、少しずつユウに惹かれていく自分を自覚していた。確かに監禁されている間にユウを好きになった。
 けれど、日を追う毎に彼への愛は私の中で深まっていった。束縛が激しいところを除いては、非の打ち所がないほどに完璧なユウ。
 朝起きると彼は、必ずエスプレッソマシーンでコーヒーを淹れてくれた。
「杏奈。コーヒー淹れたよ」
 そう言って眠っている私の頬にキスを落としてくれる。朝の苦手な私はコーヒーの香ばしい匂いと、ユウの穏やかな笑顔で目がさめる。
「おはよう……ユウ」
「朝ごはん作ったよ」
「ごめん……私、また寝坊……」
「気にしないで。ほら、おいで」
 優しく手を引かれて寝室をあとにする。ユウはいつも落ち着いた表情で私を包み込む。その度に、胸があたたかくなった。
 良いところはそれだけじゃない。彼は聞き上手だし話し上手。
 数日前、いつものように夕方仕事を終えて彼の家へ行ったときだった。私がちょっと疲れた顔をしているだけで、
「疲れてない? なにかあったの?」
 なんて訊いてくれた。
「んー、平気。ちょっとミスしちゃって」
「話聞くよ。相談にものるし」
「……ありがとう」

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