というわけで。
つまり、なんというか、……言うしかなかった。
お見合いの話をした。ユウさんはなにも言わず帰った。立ち尽くしていると、美咲さんから声をかけられた。
「あいつ、なにかあったのか?」
「いや……じつは」
俺は、事情を説明した。美咲さんは、なにも言わなかった。ただ、視線をおとし、なにか考えていた。
いつもはユウさんと喧嘩ばかりしている美咲さん。杏奈先輩がユウさんの記憶を失ったとき、一番悲しんだのはほかでもない。美咲さんだった。
すこしの沈黙。
「浩太」
美咲さんが口をひらいた。
「はい」
俺は、ゆっくりとそのほうを見た。
言葉にできないような表情の美咲さん。悲しんでいるような、怒っているような、そのどちらでもないような顔をしている。もしかしたら、俺も同じ顔をしているのかもしれない。
美咲さんが呟くように言った。
「俺たちは……なにもできねぇ。けど……やっぱり……あまりにもユウが可哀想だ」
「……そうっすね」
ほんとうにそう思った。ここ最近、杏奈先輩とユウさんは頻繁に連絡を取り合っていた。
二週間前、ジムに遊びにきたことがきっかけで、ふたりの距離が縮まったようだった。
もしかしたら、このままうまくいくんじゃないか。そんな矢先のことだった。
なのに、なんでこんなうまくいかねぇんだよ。俺……幸せそうなふたりの顔眺めるのが好きだったのにな……。
毎日更新できずすみません。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。