けれど、そんな私の願いなんて届くわけもなかった。
「……我慢できない……おかださんのが……ほしぃ」
艶かしい声にユウは頷く。そして、ユウと女の人はひとつになった。
淫らに揺れるふたつの影。私は瞬きするのも忘れて見つめた。
女の人に覆い被さるユウを目に焼き付けていった。ユウは、それは色っぽくて格好よかった。
私は、女の人が羨ましくて仕方なかった。求めるものを求めるだけ与えてもらっている女の人に嫉妬した。
なぜ……私にはしてくれないの? ユウは私のことが好きなんじゃないの? なのに、どうして他の女の人と愛し合ってるの? 私もあんな風にされたいのにーー。
…………。
「……っ」
悲しくて、つらくて、たまらなかった。
それなのに目をそらせない。ユウの真剣な表情に魅入った。嫌悪感が胸に湧く。行為が終わってもそれはおさまらなかった。
頭の中が悲しみの渦で覆われる。裏腹に女の人の調子の良い声。帰り際まで女の人の熱は冷めていないようだった。
「……おかださん、すごくよかった。……私こんなに感じたの今までなかった……あ、それと契約の件は、任せておいてね。社長に言い寄れば、イチコロだから」
「うん。助かるよ」
「じゃ。おかださん、またね」
そして、名残惜しそうに帰っていった。途端に静けさが戻ってくる。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。