第36話

溺愛⑦
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2019/04/01 02:30


 けれど、そんな私の願いなんて届くわけもなかった。
「……我慢できない……おかださんのが……ほしぃ」
 艶かしい声にユウは頷く。そして、ユウと女の人はひとつになった。
 淫らに揺れるふたつの影。私は瞬きするのも忘れて見つめた。
 女の人に覆い被さるユウを目に焼き付けていった。ユウは、それは色っぽくて格好よかった。
 私は、女の人が羨ましくて仕方なかった。求めるものを求めるだけ与えてもらっている女の人に嫉妬した。
 なぜ……私にはしてくれないの? ユウは私のことが好きなんじゃないの? なのに、どうして他の女の人と愛し合ってるの? 私もあんな風にされたいのにーー。
 …………。
「……っ」
 悲しくて、つらくて、たまらなかった。
 それなのに目をそらせない。ユウの真剣な表情に魅入った。嫌悪感が胸に湧く。行為が終わってもそれはおさまらなかった。
 頭の中が悲しみの渦で覆われる。裏腹に女の人の調子の良い声。帰り際まで女の人の熱は冷めていないようだった。
「……おかださん、すごくよかった。……私こんなに感じたの今までなかった……あ、それと契約の件は、任せておいてね。社長に言い寄れば、イチコロだから」
「うん。助かるよ」
「じゃ。おかださん、またね」
 そして、名残惜しそうに帰っていった。途端に静けさが戻ってくる。

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