第180話

暮れなずむ町の、②
2,477
2019/05/09 01:46


 星がポツポツと出てきた。空は藍色に変わりつつある。遠くに見える山の上部を眺めた。そこだけは、ピンク色と水色をマーブリングしたような淡い空がのこっていた。けれどそれも、まばたきするごとに、藍色へ移行していく。
 しばらく息をしたあと、視線を近くへ戻した。こっちへ向かってくる影。その影が、私を見つけた。一度立ち止まり、そしてかけてくる。
「杏奈先輩っ」
 そう言って、私のもとへやってきた。そんな彼に、笑いかけた。
「こんばんは。浩太くん」
 知ろうと思った。私のなくなった記憶すべて。知るためには、浩太くんがいちばんいいと思った。
 うす暗い道を、並んで歩いた。浩太くんが、ニコニコしながら言った。
「どうしたんすか? あんなところで待ち伏せして」
「あぁ、うん。ちょっとね」
「なんすか!? 今日の杏奈先輩、ちょっと大人っぽいっていうか……こわいっすよ?」
「…………」


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