ユウが私の服に手をかける。
その言葉に私は慌てて制した。
「ユ、ユウっ、まって」
「……なに?」
ジロリと睨まれてしまった。
実は気にかかっていることがあった。それは、先生からの指導。
「足の傷はまだ完治ではありませんからね。無理はしないこと。いいですか? 杏奈さんも、彼をちゃんとみてやってくださいね」
私もそこにいて、念を押された。無理をさせてはいけない。激しい運動もまだ控えるように、と言われた。
私なりに考えた。
激しい運動…………とは? …………エッチだって例外じゃない。
ーーうん。
私は一度おおきく頷くと、彼のほうを向いた。
「え、なに?」
ジッと見つめると、ユウの身体が微動する。
「……ユウ、あのね」
私は意を決して言った。
「今日は……だめ」
「は……だめってなにが?」
ユウの眉間にシワがよっていく。私はつめよると、人差し指を立てた。
「先生が激しい運動しちゃだめって言ってたでしょ?」
「うん」
「だから、今日は……ね?」
訳がわからないと言った顔をするユウ。しばらくしたのち、彼が呟くように言った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。