予想。というか半分は勘。女の勘みたいなもの。
映像に映っている窓の形とか、そこから見えるわずかな外の景色。それらを照らし合わせる。あとは、自分の勘。
そして、導き出した。ユウが監禁されていると推測した場所。 それは、ユウの家から斜め向かいにある家だった。
いつも大きな家だな、と思っていた。ときおり使用人らしき人が出入りしているのを見る。けれど、住んでる人を見かけたことはなかった。
まさかこんな近くにいるなんて。そんなことあるだろうか。けれど、その予想は捨てきれなかった。
私は、ゆっくりと息をした。そうしたのち、インターホンに手を伸ばした。
しばらく待った。玄関のドアが開く。じわりと開かれたドアの向こうにいる女性。
私は、驚きの感情を余すことなく表情にのせた。真っ白な白いワンピース。ストレートな長い髪。お人形のような顔。そこにいたのは、桜子だった。
私は、声が出せなかった。彼女は、ほんとうに斜め向かいの家にいた。
まさか……こんな近くに……いたなんて。
驚き立ち尽くしていた。と、クスクスと笑い声が聞こえてきた。
「だれかと思えばあなただったのね。杏奈さん」
高音の透きとおった声。生で聞いたのは初めてだ。お姫様のようにおしとやかな態度に背筋が凍る。桜子は私のことを知っている。そして私がここにきた理由も。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!