第196話

愛護②
2,604
2019/05/12 13:00


「あなただって、三野村杏奈を監禁したくらいだ。犯される気分を味わえてさぞ嬉しかっただろう」
 瞬間、岡田ユウが消えた。気づいた時には、頭を掴まれていた。耳もとで囁くような岡田ユウの声。
「五月蝿いって言ってるだろ」
「っ……!」
 脳が揺れた。景色が大きく回る。それから、最後にコンクリートが見えた。硬いコンクリートが顔面に食い込む。
 ゴキ……っ。鼻が捻じ曲がった。軟骨が潰れるのを身体で感じ取る。飛んでいく前歯。鉄の匂いが鼻腔を満たした。
 あーー……すごいな。岡田ユウにまだ、こんな力が残っていたのか。
 感心しつつ、ゆっくり起き上がる。鼻と口から多量の血が流れ出た。
 あ、もう一個歯が抜けた。
 口の中で転がしていた歯をペッと吐き出すと、岡田ユウに笑いかけた。
「あーー……前歯が二つともとれちゃった。桜子様からレイプされるのが、そんなに嫌だった? あ、そっかぁ、三野村杏奈の手前、気持ちよかったなんて言えないか。あはははははは」
「五月蝿い。さっさと死ねよ」
 重圧を加えたような低い声と殺気。破顔する私へ続けざまに攻撃を仕掛ける。飛んでくるユウの裏拳。
 だいじょうぶだ。攻撃は見えている。それを回避したあとに、攻撃を仕掛ければーー。


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