「あなただって、三野村杏奈を監禁したくらいだ。犯される気分を味わえてさぞ嬉しかっただろう」
瞬間、岡田ユウが消えた。気づいた時には、頭を掴まれていた。耳もとで囁くような岡田ユウの声。
「五月蝿いって言ってるだろ」
「っ……!」
脳が揺れた。景色が大きく回る。それから、最後にコンクリートが見えた。硬いコンクリートが顔面に食い込む。
ゴキ……っ。鼻が捻じ曲がった。軟骨が潰れるのを身体で感じ取る。飛んでいく前歯。鉄の匂いが鼻腔を満たした。
あーー……すごいな。岡田ユウにまだ、こんな力が残っていたのか。
感心しつつ、ゆっくり起き上がる。鼻と口から多量の血が流れ出た。
あ、もう一個歯が抜けた。
口の中で転がしていた歯をペッと吐き出すと、岡田ユウに笑いかけた。
「あーー……前歯が二つともとれちゃった。桜子様からレイプされるのが、そんなに嫌だった? あ、そっかぁ、三野村杏奈の手前、気持ちよかったなんて言えないか。あはははははは」
「五月蝿い。さっさと死ねよ」
重圧を加えたような低い声と殺気。破顔する私へ続けざまに攻撃を仕掛ける。飛んでくるユウの裏拳。
だいじょうぶだ。攻撃は見えている。それを回避したあとに、攻撃を仕掛ければーー。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。