ほんとうにその通りだ。監禁した本人のセリフとはおもえない。けれど、ユウがそれを望むなら仕方ない。しぶしぶ了承した。
そして、久しぶりに自分のアパートへ戻った。家に帰るとまず、職場に連絡した。何度も頭を下げて謝った。同僚からも何があったのかと訊かれたけど、笑ってごまかした。
「急に旅行へ行きたくなっちゃって。心配かけてごめんね」
ユウのことは一言も言わなかった。
翌日から仕事へ行った。私は何事もなかったように働いた。けれど、それは形上。仕事が終わると、自宅へは向かわない。ユウの家へ行く。
インターホンを鳴らす。ドアが開いた。愛しい人が私を待ちわびたように出迎えてくれる。
「おかえり、杏奈」
「ただいま」
私はユウに向かって微笑んだ。
家へ入るとユウは私に手錠をはめる。そうすることで、安心するのだと彼は言った。私はそれを受け入れる。
「今日も、ちゃんと僕のもとへ帰ってきてくれたね」
「うん」
「可愛い杏奈」
私をやさしく抱きとめるユウの声。色っぽくて、ドキドキする。
「ねぇ、今日の仕事はどうだった?」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。