傘繋がりでまた再会した女の子、あなた。
傘を返して関係が終わると思ってた。
でも俺は、管理人のことや、掃除のことを話していた。
あわよくばあなたちゃんにも手伝ってもらえれば、
なんて。
誰でもよかった。記念館は広いし。
話し相手が、
パクジミンとしてみてくれる人が、欲しかった。
でも俺の事情は知って欲しくなかった。
知ったら離れてくから。
全員、離れていってしまったから。
教えたら、あなたちゃんもいなくなるんじゃないのか。
それだけは、耐えられなかった。
でもあなたちゃんは、
俺のことを知っても、
力になりたいと言った。
初めてだった。
好きな人を聞いたら、いないと答えられて。
彼氏とかがいたら申し訳ないなんて思ったから聞いたのに、
いないと答えたあなたちゃんに、
心から安堵する自分がいた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!