前の話
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『なぁ、先生?俺の命はなくなる運命なんだろ。』
震えた声が空気に触れた。瞬間、言霊は響いた。ただただ、しんみりと儚げに散っていった。
「…馬鹿かよ。お前にはお前を望む奴らが沢山待ってるんだよ。お前みたいな馬鹿が、馬鹿みたいにいるんだよ。…お前はそんな馬鹿たちに恩を仇で返しちまうのかよ。」
『…そんな事したくないよ。でも、努力したところで結果は同じなんだよ。病気は良くならない。ただ病状が悪い方へと進むだけ。…そんな事____』
「その考えがひねくれてんだよ…!もっと努力をしろ_____」
『黙れよ…!!!こっちの気持ちをわからずに…お前の理論叩きつけやがって…!!少しは黙ってあたま冷やせ馬鹿…!!!』
カッとなって言い返した。人間、価値観なんてバラバラなんだ。基準なんてそんなもの正しいわけがない。薬の副作用、周りからの偏見、親からの差別、暴力、いじめ。…誰も味方なんていないじゃないかよ。彼奴だって口だけなんだろ?また俺を騙すんだろ?
…ならいいよ。俺が人を信じなければ。人を頼らなければ。完全に孤立したっていいんだだから、だから、誰かが手を差し伸べるまで、それまでただひたすらに海の底で助けを待つんだ。
_____ 人間不信 _____
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。