第15話

過去①
7,788
2020/08/28 05:49
*黒尾side



中学校を卒業した春、俺は嫌がる研磨を連れて公園に行った



そこは小さい時から研磨とバレーを練習した場所だった



そこで出会ったのがあなただった



家が近くだったこともあり、3人でバレーをするようになった



そんなある日の事だった



黒尾「なんであなたはそんなにバレー上手いのに部活入んないんだ?」



あなたはスパイクもレシーブも上手かった



しかし、あなたは部活に入っていなかった



その実力ならエースだって狙えるのに……



俺はそう思っていた



あなた「んー、トラウマかな」



へらっと笑ってそう言った



あなた「ちょっと私の話してもいい?」



そう言ってあなたは話し始めた



あなた「私、お兄ちゃんがいるの」



孤爪「…見た事ない」



あなた「うん、両親離婚してるから」



あなたはボールをつきながら言った



あなた「若くん…お兄ちゃんはさ、中学で私立に入って男バレでめちゃくちゃ活躍してさ、県内でも有名だったの」



すごいでしょ、とあなたは誇らしげに言った



あなた「お兄ちゃんに憧れて、私も中学からバレー始めたんだけど、私には才能がなかった。だから必死に練習して1年でレギュラーになったんだ」



1年でレギュラーって…相当練習したんだな…



あなた「それで、全国大会も出て、私は雑誌に最強兄妹って紹介された。それが気に食わなかったんだろうね、みんなから疎まれるようになった」



あなたは笑いながら話していたが、俺は笑えなかった



あなた「スパイクが決まった時は、さすが最強兄妹って言われて、ブロックに引っかかった時はお兄さんはすごいのに、って言われた」



あなたはついていたボールを持って話を続けた



あなた「それが嫌になって、バレーは好きなのにやりたくなくなった。そんな時、両親が離婚することが決まって、私はお父さんについて行くことにした」



俺も研磨も黙って話を聞いていた



あなた「お父さんは海外に行くから、私もついて行こうとしたんだけど、お父さんのお姉ちゃん…つまりおばさんが、うちに来ない?って言ってくれて、今はおばさんと暮らしてる」



あなたが一緒に住んでいるのはてっきり母親だと思っていた



俺はあなたにこんな過去があるなんて思いもしなかった



あなた「バレーは好き、楽しいもん。だけど、試合をするって考えるとまだ怖い。だから部活には入らないんだ」



あなたは笑っていた



話している間も、話し終わってもずっと…



その笑顔が作り物だということを、この時の俺は知らなかった。

プリ小説オーディオドラマ