私は反射的に目をつぶってしまったが、いつまで経っても痛みは襲ってこなかった。
目を開けるとそこには輝がいた。
綾小路先輩の顔は青ざめていた。
理由は輝に話を聞かれた上、手を出すなんて冷めるに決まってる。
輝は困ったように手を首に回し、言おうとした。
先輩はそう言い、泣きながら走って帰ってしまった。
_そんなに現実を受け入れられなかったか。
_まぁずっと片想いだったん出ししょうがないか。
「何を勘違いしたんだろ?」と言ってニコッと微笑んでいる。
_こいつ、あの作戦を知っていた上で言ったのかよ。
私が言う作戦というのは少し時間が遡る。
八尋さんと別れた後、急いで生徒会室に向かった。
_こいつ、あの噂のことはお構い無しかよ。
_こいつも変な慣れがあるな。
最初はヘナっと笑っていたが、私の名前を出した途端急に態度が変わった。
一瞬沈黙が流れた。
_言い方は私がまずかったけど、どうしてその流れでそうなんの??
長年の付き合いで分かったことはこいつは簡潔な説明の方がよく分かってくれることだ。
なので、今回も分かってくれるだろうと思った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。