第17話

終幕 私はすべてを失った 幕間 生と死
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2022/02/20 08:53
 死とは、人間に用意されたたった一つの平等であり、また逃げ道である。
 どんなに贔屓されて得して生きてきた人間も、過酷な道を歩んできた人間も、どんなに財産や権力を持つ人間も、毎日食料を求め歩き回った貧しい人間も、必ず死ぬ。
 問題は、いつ死ぬか。
 結果として死ぬことは平等だ。しかし、若くして死ぬか、人生を十分満喫して死ぬか、それは結局不平等である。
 人間はある意味平等に作られた。かといって、それを知らずに不平不満を嘆く人間が間違いとは言い難い。
 不平等を嘆く人間も、平等に気づき静まる人間も、皆人間。間違いか愚かかなどどうでもいい。何を考えたって、必ず死ぬ『人間われわれ』のだから。

 人間は、他の動物とは違い、自ら死のうともする。
 これまでの人間の歴史の中で、『自殺』という行為をした人間がどれくらいいるだろうか。
 そんな無数の例の中には、心中というものがある。
 共に死ぬ、そんなやさしい死に方を自殺に含むのはあまり好まないが、自殺は自殺だ。
 愛を確かめ合うために死ぬ、そんな理由が死の理由になる、それは必死に生きようとしている人に失礼ではないか。そもそも、授かった命を無駄にするのはなんて無礼なことなんだ。
 そんな言葉だってあるかもしれない。だが、人間われわれの死を縛り付けられる権利が人間きみたちにあるだろうか? 一秒におよそ2.5人もの人間が生まれているというのに、なぜそこまで生にこだわるのか?
 死にたいなら死になさい。生きたいなら生きなさい。その選択肢もやり方もすべて人間きみたちに委ねるから。
 選択肢のない人間なんていない。生きようとするか、死のうとするか、結果はどうであれそれだけは選ぶことができる。
 結局、人間きみたちは自由なんだ。
 平等で不平等で、選択肢のある自由な者たち。それが人間きみたちなのだよ。
 何の意味もなく生まれた人間きみたちは、何の意味もなく死んでいくのだ。

 さぁ、人間きみたちはこの宇宙という箱庭の中でどう選択するのか──?

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