第20話

番外編 あったかもしれない周防京香の心情
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2022/03/28 10:15
 素材の可愛くないアタシは、可愛く着飾ることが必要とされている。
 昔の自分と決別し、もっと綺麗な格好をすると誓った。
 しかし、綺麗にするやり方を知らない。
 だからたくさん調べた。主に使ったのはインターネット。検索して検索して、綺麗になる方法──メイクのコツ、可愛い服選び、美を保つ秘訣──を色々知った。
 その多くを参考にしたのは、アタシが変わるきっかけをくれたアイドル、蓮見麗華だ。彼女は元々、容姿を売りにして活動していた。だからメイク動画や服選びのポイントを紹介した動画などがたくさん配信されている。
 蓮見麗華──れーちゃんは、いつもアタシたちに笑顔をくれる。魔法、あるいは薬(と言うと聞こえが悪いけども)である。
 アタシもそんな人間になりたかった。注目の的のような存在。

 ──瀬戸さざれとの出会いは、衝撃的なものだった。
 その素材は十分に綺麗で、思わず見とれた。
 アタシは罪を犯したけれど、さざれは許してくれたのだろうか。きっと許していないし、でも怒っているわけでもない。ゆきまゆが全てなのだろう。
 アタシはこの二人に嫉妬しない。
 さざれが幸せなら、別にいいかなって思うから。

 昨日、歩道橋でアタシの思いをさざれにぶつけた。
 さざれは「わたしを好きでいてくれてありがとう」なんて言ってくれた。
 この言葉はフラれたという意味だけれど、感謝されるのはやはり嬉しい。きっとこれから一緒に居てくれるのだろうな。友達として。
 本気でさざれのことが好きだと、もっと落ち込むのだろうか?
 わからない。でも、別にもういいかな。
 二人の幸せを傍で微笑みながら見ていればそれで満足だろう。
 変われたから、今がある。れーちゃんには、感謝しかないな。





「あなたはわたしの愛を邪魔する存在」

 避けられない運命も、覆しようのない未来も。
 少女は受け入れた。

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