わたしは、死を決意した。
それがいいことなのか悪いことなのかわからない。多分どっちでもないんだと思う。
わたしはきっと、幸せすぎて、この世界を汚れたものとして認識しているんだと思う。"客観的なわたし"が、そう言っている。
きっと恵まれない人は、この世界をただの舞台として認識しているだけで、自分がどうすれば舞台俳優として輝けるかを考え続け、抗っているのだろう。わたしには到底できない。何故なら幸せだから。
いじめにも屈せず、大人の視線に怯えど決してわたしは死ななかった。平気でいることができた。
わたしは、強いんだと思う。自画自賛とかそんなのじゃなくて、事実として。
だから、弱くて可愛らしい者に惹かれる。相補性の法則とやらだろうか。
罪を犯し、罵られ、同情され、惹かれ、愛を知り、また罪を犯し、幸福を繰り返し、自ら死ぬ。
そんなどうでもいい人生なんだ。
「わぁ〜!! マジカルランドだぁ〜!!!」
私はマジカルランドのエントランスで大はしゃぎ。スキップしながらパーク内へ向かう。
はしゃぐのも無理はない。病室のテレビでよく見ていたあのマジカルランドが、すぐそこにあるのだから。
「浮かれすぎて怪我しないでね」
「そんな子どもみたいなことなんてするわけな──」
その瞬間、スキップのリズムが狂い、何もないのに躓きとてんと転ぶ。
「いったた...フラグだったかぁ〜」
「ふふ...大丈夫?」
さざれちゃんが左手を差し伸べる。ちらりと見えた左手首には、リストバンドがあった。
「......大丈夫! さ、時間は有限なんだから、思いっきり楽しむよ〜!!」
私が拳を空高く上げると、さざれちゃんも恥ずかしそうに小さな声で「おー」と言った。
微笑ましくて、私の笑顔がより綺麗に咲いた。
まず、私たちは色々なお店が立ち並ぶエリア、マジカルバザールというエリアで買い物をした。
私はお菓子を買ったが、さざれちゃんは特に何も買わず、ショッピングをする私を笑顔で眺めていた。
次に、マジカルバザールのすぐ隣にある冒険と自然のエリア、レッツアドベンチャーというエリアに向かった。
そこには人気のアトラクション、スプラッシュジェットというジェットコースターがあった。これは、最後に水しぶきの中を猛スピードで駆けていくものらしい。
私は怖がるさざれちゃんを強引に乗せたが、終わった時は私の方が青ざめていた。
その次、いかにもマジカルランドらしいお城とメルヘンな施設が立ち並ぶエリア、ファンタジーマジックランドに行った。
よくテレビで見たお城の中には、自分がお姫様になったような気分になれるドレスの貸し出しをしていた。
さらに、のんびり船で世界を一周するアトラクション、アイライクビッグワールドにも乗った。
そして最後に、未来と宇宙をイメージしたエリア、スペースフューチャーというエリアに足を運んだ。
そこでは3Dメガネを付けて宇宙を旅するアトラクションや、激しく未来へ加速するイメージのジェットコースターなとがあった。
このようなメジャーなアトラクションは、おそらく全部乗って楽しんだ。
私がたくさん騒ぐ中、さざれちゃんはにっこり微笑むだけだった。私が子どもっぽいみたいな気分。
西日が眩しくなる頃、私たちはエントランスに戻っていた。楽しい時間はあっという間、だ。
「また、一緒に行こうね! 今度は、今日乗ってないアトラクションも...ね」
私はさざれちゃんにそう言葉を投げかける。
「...そう......だね」
さざれちゃんは少し寂しそうな顔をしていた。
きらびやかな日々に、別れを告げたそうな──この明るい楽しいマジカルランドには、似合わなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!