トイレの前に立つのは、海南ななか。
彼女が立つそのすぐそばで、いじめと言っても良いことが行われていた。
その原因は、半分は彼女、ななかだった。
いじめられている少女は、ななかを庇い、今このようなことが行われている。
だが、自分が悪いと分かってても助けに行くことは出来なかった。
彼女は怖いのだ。
自分も標的にされるかもしれない。
もっと酷いことをされるかもしれない。
そんな事、喜んで行く人などいないだろう。
罪悪感に包まれながら、彼女は学校を後にした。
帰り道、殆どが放心状態であった。
自傷気味に笑い、ベットに倒れ込む。
何も、やる気が起きてこなかった。
これほどない罪悪感に飲まれ、もう何も出来なかった。
泣いてはいけないはずなのに、涙が出てくる。
それは、どう足掻いても止められない涙だった。
眠たくなってくると、ある思いが頭をよぎる。
こんな私が、なにも罰を受けないのはおかしい。
どうか、叶わない願いだとしても……
こんなの、罪滅ぼしにもならない。
ただの、自己満足のようなものだ。
そう。自己満足だからこそ、受けなきゃいけない。
そうじゃないと……
ごめんなさい。ごめんなさい。
いくら謝っても、本人には届かない。
そのまま、何も無いようになるだけ。
ただ…
このままだと……
私は、罪悪感に殺されてしまう。
自分勝手だとは思う。
ただ、どうしても無理なんだ。
親友がどれほど傷つけられても助けられない自分が憎くて。
自分に標的が向かないようにしている私が醜くて。
もう……死んじゃいたい気持ちだった。
「最低だね」
「報いを受けてよ」
「なんで…助けてくれないのよ!」
優しくしなくて良いから…
報いを…
報いを…報いを受けさせてください。
お願いします。
お願いします。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!