嘲笑う恩田さんは、今までで一番喜んでいた。
えぇ。神様はいるだろうね。
あなたの中にいる…
死神っていう不幸の神様は。
そう言うと、恩田さんは一足先にトイレを出た。
もう、私にできることはなかった。
絶望のレールを目の前に敷かれて、レールの周りは全部暗闇。
絶望を進むしかない状況に、できることなどなかったんだ。
呂律が回らない。
体も動かない。
ただ、緊張の糸だけが、体を引っ張っていた。
いつの間に家に帰ったのか、わからない。
私は自分のベットの上で天井を見ていた。
周りから見たら、どんな図になっているんだろう。
すると、ずっと…ずっと我慢していたものが、私から出てきた。
頬が濡れる。
目の前が霞む。
何処からか、声がする。
叫んでいるような、苦しそうな声。
……………………あ
…………私の声だ。これ。
喉が切れるほど痛い。
とても、熱くなる。
いつのまにか声は出なくなって、息だけが口から出るようになった。
呼吸をしているはずなのに苦しく。
悲しく。
生きている心地がしなくて。
自分すらも、よくわからなくて。
消えそうにもなる。
でも…
【消えそう】なだけで、消える訳ではない。
もしかしたら、このまま消える方が楽なのかもしれないのに。
あぁ…神様は……
神様は…
どれだけ助けを求めても、結局は空気に溶けて言葉自体無くなって行く。
なら…
なら、助けを求める価値ってなに?
「ねえ、大丈夫?」
「味方だよ」
「大好き!」
…その言葉が………あれ…ば…
あれば……
いつのまにか、睡魔が襲ってきて寝そうになる。
あぁ……どうか……
どうか、夢の中では…夢の中では…
夢の、中では!
お願いだから。
一人きりの時だけは…
誰も…いない時だけは…
私だけの…幸せな空間に入れますように…
楽しく過ごせます…ように…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!