学校からの帰り道、明日来さんにどう言うことをしてもらうか考えている途中。
少し。ほんの少しだけ、迷いがあった。
…これで、良かったのかしら。
私のやったことは、あっていた?
小さい頃は、私は周りのことを何も決められなくてずっと家族や友達に永遠聞いていた。
「これであってたの?」
「こうで大丈夫かな?」
必ず周りの人は、こう言ってたんだ。
「うん。絶対それであってるよ」
「カエデちゃんがそう言うならあってるよ」
だから…
…何を聞いても無駄だったの。
思い込むような形で決めたけど、大丈夫。
もう、怖いものは無いから…
……そう。
もう、良いんだ。
私が全てだから。
私のやったことがあっているから。
学校の私は、風。
風で、みんなを動かす。
風に逆らう風見鶏なんて、風見鶏じゃないわ。
明日も明後日も、風見鶏としてみんなは入れば良いの。
今までも、私に逆らった者はいた。
その子達は、いつしか学校に来なくなった。
学校に来なくなった者は……
とても、楽しそうに過ごしてて。
もう自分に困るものはないとでも言いたげで。
それが……
それが…
大丈夫。大丈夫。
私は教室のみんなを…
私が…悪いんじゃ無い。
学校が決めたことだから。
でも……
こんなこと言っても、周りの人には分からないだろうけど。
「カエデちゃん」
「カエデ!」
「カエデちゃん。一緒に遊ぼ?」
「恩田さん。おはようございます」
「恩田さん」
「恩田さん。これがノートです」
あれ……?
いつのまにみんなは…
私を、苗字で呼ぶようになって。
私を、遊びに誘わなくなって。
私を、恐ろしい目で見るようになったんだっけ…?
私には友達がちゃんといるもの。
きっと今だって、勉強が忙しいからみんなが遊びに誘わないだけ。
きっと。
きっと…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。