季節は巡り、春になった。
中学生だった遥菜は、高校の入学式を迎えた。
生徒玄関前に張り出されたクラス表を見て、遥菜はたちまち笑顔になった。
2人には、不安な気持ちなど、全くなかった。2人が一緒なら、きっと大丈夫。楽しいはず。2人には確信があった。
遥菜とゆいは、そういう仲だった。
教室に着くと、2人はさっそく座席表を確認する。
席は、名簿順になっている。
当然、遥菜とゆいの席は離れていた。
2人は手を振って、それぞれの席に着いた。
遥菜は、ゆいが隣にいないからか、急に不安になってきた。
一方で、ゆいは隣の女の子に早速話しかけている。
遥菜もそこまで内気なわけではないけれど、初対面には弱い。
遥菜は俯いた。
遥菜は隣の席に座っていた男の子に急に話しかけられ、驚きながらも顔を上げた。
初対面に弱い遥菜は、目を合わせられずにあたふたしている。
遥菜は、この人絶対モテる、と思いながらその彼を眺めた。
遥菜にとって、優しいイケメンに名前を聞かれるなんて経験は、そうあったものではない。強いて言えば、遥菜が大好きな翔に出会ったときくらいだ。
「はるちゃん」
遥菜が真っ先に思い出したのは、翔のことだった。
遥菜にとって、それは翔だけが遥菜に対して使っていた愛称だった。
隼人は、遥菜の様子を不思議に思いながらも笑顔で答えた。
2人の様子を見ながら、ゆいは1人にやけていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。