キャハキャハしている3人のことなど気にも止めず、遥菜はただ、目の前の翔を見つめた。
微笑んで言う翔と一瞬目が合った気がして、遥菜は目を逸らすのと同時に軽く頭を下げた。
教室は拍手で包まれた。
翔は、どこへ行っても人気者なのだ。
昔もそうだった。翔には彼女もいたし、友達も沢山いた。告白されることも多いと言っていた。
翔の笑顔を見て、遥菜は少し安心した。
遥菜も、無意識のうちに笑顔になった。
教室が一気に賑やかになる。
遥菜は下を向いた。
遥菜は思わず声を出してしまった。
視線が一気に遥菜に集まる。
翔は、慌てて手で口を覆った遥菜を見て、ニコッと笑った。
HRが終わり、教室は一気に空になった。
皆、新しく出来た友達とプリクラやらカラオケやらで早く帰ってしまったのだ。
遥菜は、誰かと特別仲良くなれたわけではなかったので、これから帰るところだ。
ゆいは、席が近い子達に誘われたようで、ついさっき教室を出ていってしまった。ごめん、のジェスチャーを受けた遥菜は、仕方なく1人で帰る準備をしているということだ。
遥菜は1人、教室を出て、玄関へ向かった。
2・3年生は部活をしているようで、グラウンドからサッカー部の声が聞こえる。
グラウンドの端で隼人がサッカー部の見学をしているようだった。
隼人は手を振っている。
遥菜も慌てて振り返した。
1人だった遥菜は、隼人1人でも自分を誘ってくれたことがかなり嬉しかった。
遥菜はしばらく、隼人とサッカー部の練習を見ていた。
遥菜は、心愛達3人のことが頭に浮かんだ。
遥菜は走って教室に戻った。
もちろん、教室で何もすることがない遥菜は、とりあえず自分の席に座る。
教室には遥菜1人。静かな中に吹奏楽部の楽器の音が時々聞こえてくる。
遥菜は気がつくと眠っていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。