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第12話

患者×看護師
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2020/01/25 13:24
結論が分かっても、私と久保田さんの関係は患者と看護師。

何もない。朝の先生の巡回を終えてから、退院の準備をし始めてた。

一時間後。

私の荷物を整理している時に、母さんが来た。午前中には退院できる。

荷物を整理してから、母さんと私でナースステーションに声をかけた。

そこには、久保田さんはいなかった。

いたのは、久保田さんの上司である女性看護師と他の看護師の方2名がいた。

会えなかった。

あれ以来、会えなかった。
「お世話になりました」

 そう一言だけいってから、エレベーターを来るのを母さんと待っていると、誰かの声がした。

 それは、久保田さんだった。走ってきたのかはぁはぁと息切れをしていた。

「…久保田さん」

 目の前に久保田さんがいることに、驚きつつ、呆然としていた。

「退院できてよかったですね。あと、なにかあればまたこの病院に来て下さいね」
 初めて会った日と同じ声のトーン。

笑って相手の気持ちを理解しようと話しかけてくる姿勢。

どれも好きです。 
あの日、迷惑をかけた時に悲しそうに笑っていた姿。

それも、忘れられないくらい好き。

 これは間違いなく、恋。

でも、患者と看護師の関係は変わらない。それ以上にもなれない。

 あなたは、私の初恋の人でした。

ありがとう。心の中で私は言い、目の前にいる久保田さんを見て、声を発した。

「ありがとうございました」
大きい声で私は久保田さんに言い、笑顔で手を振った。

病棟にいる看護師の方や患者さんは驚いたように私たちを見ていた。

 周囲の人達よりも、久保田さんは笑顔で私を見て、笑顔で微笑みながら私に手を振っていた。

 エレベーターに私は乗り込んだ。久保田さんは私たちの前までいき、礼をしていた。エレベーターが閉まるまで。

 一階に着いた母さんが私に声を掛けてきた。

「いいの? さっきの看護師さんと話さなくて」

 不思議そうに私を見て、母さんは言った。

「いいの。もう退院するんだから」

 私は母さんに言い、私達は駐車場にある車まで歩き始めた。

あなたは近くて遠いのに、なぜかあなたと話したくていつも話しかけていました。

あなたは近くて届きそうなのに、届かない。

 患者と看護師の関係は変わらないのに。

 でも、あなたのことが好きでした。

 あなたが私の初恋の人でした。

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