「…レントゲン検査するので、金属類のものを付けているなら、それを外してきてください」
そう言って、私の部屋のドアを閉めて、どこかに行ってしまった。
冷たいな、仕事だからこんなもんか。
久保田さんは誰に対しても表情変えずに立場とか気にせず、気さくに話してるのを見ているからかな。
それより、検査するから下着外さなきゃ。
急いで車いすに乗ってから、他の看護師の方の元へ行き、検査室に連れて行かれた。
検査は約一時間。長くなると思ったが、短かったな。
無事、検査できたし良かった。
検査を終えて、他の看護師の方に車いすに引かれて、自分の部屋へ戻った。
今は、十一時半。
お昼は、十二時。あと、三十分。テレビを付けて、ボッーとしていよう。
いつの間にかベットの横になっていた。
あれ? いつの間に。
その時、目の前に誰かがいた。
「あら? 起きた?」
うん? と目を擦りながら、目の前にいる人を見ると母さんだった。
「え? 早くない。午後に来るって言ってたのに」
そう言うと、母さんは言った。
「今、十三時だけど」
「え? え? どういうこと」
私を驚いて、母さんの目を見た。
「あんた寝ちゃって、お昼はあとにしてもらったのよ」
私寝ちゃったの。
確か、私はテレビを見ていたはず。どうやって横に。そう思ったら、母さんが声を発した。
「あ、あの看護師さんには礼言っておきなさいよ」
母さんは私の必要なモノを引き出しに閉まっていた。
「……それって、誰?」
目を丸くして、母さんを見た。
それに気づいたのか母さんは私の方を向いて、返事をした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!