今、私は病院にいる。なぜかって。
それを今から話そう。勉強疲れなのか足が腫れてしまい、入院することになった。
病名は、50人に1人しかならない。
下肢蜂巣炎(かしほうそうえん)になってしまった。
いわゆる、免疫力が弱くなって、傷から炎症が起きてしまい、腫れたのだ。
あはは、笑うしかない。
花野光(はなのひかる)、高校三年生。ただいま、大学受験勉強の真っ最中。
なのに、なのに。
自己管理ができていない自分に腹が立ってしょうがない。
「はあー、自分の責任だけど。なんかな」
入院二日目。
朝起きて目覚めてから、一人しかいない病棟でポツリと独り言を呟いた。
すると、扉が開いた。
「おはようございます。昨日よく眠れましたか?」
女性だと思って顔を上げたら、男性看護師だった。看護師は女性が多いイメージだが、男性看護師を見るのは新鮮だ。
「あ、はい」
私は声を発して、男性看護師に言った。
「今日から担当することになった久保田慧(くぼたけい)です。よろしくお願いします」
男性看護師の方を見ると、ペコッとお礼をした。
「あ、はい」
私は茫然としながら久保田さんを見ていた。
すると、その視線に気づいたのか。
「…あの、何か付いてます?」
目を丸くして久保田さんは、私を見てきた。
「……いや、なんでもないです」
この人、なんかいい。いや、よくわからないけどいい。いい。そんなことを考えてたら、久保田さんが声を発した。
「今から血圧測りますね」
そう言い、久保田さんが持ってきた血圧計を私の右手で測り始めた。
そう言い、久保田さんが持ってきた血圧計を私の右手で測り始めた。
ピッ ピッ ピッ
「はい。じゃあ、これで終わりね」
久保田さんは言ってから、後片づけをし始めた。どうしよう、行っちゃう。何かなにか話したい。
「…あ、あの」
私が声を掛けた瞬間、久保田さんは、はい? と私の方に向き直した。
私は茫然と久保田さんの顔を見た。
カッコいい、カッコいい。カッコよすぎだろう。心の中で叫びながら、私はポツリと呟いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!