駅前の本屋で
『死者と海辺』を買ってから
自宅へと帰った。
何処にでもあるような
普通のアパートで
一人暮らしでは十分な広さだと思う。
その本は
よくある恋愛系の小説だった。
しかし
たまに謎解きなどの要素があり、
楽しめるような本だった。
まだ
そんなに読めていない本を
そっと閉じ、眠りへとついた_
朝いつも通りに目覚めて
準備をする。
本も手にし
時間通りに家を留守にした。
駅へと向かう。
俺は電車に乗ると
早速本のページをめくり始めた。
いつも通り
彼女と会う駅に着く。
彼女もまた
所定位置でいつもの本を読んでいる。
また彼女のことを見てしまう。
何故なのだろう。
今までこんな事はなかった。
たまに
微かに目が合う時があった。
そそくさと
まるで何もなかったかのように
俺は目を逸らした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。