前の話
一覧へ
次の話

第1話

よくある名前の僕たち
191
2019/01/04 14:11
「はじめまして、佐藤です」

 なんとなく気まずい雰囲気の中、思い切って口火を切ってみた。

「あ、鈴木と申します」
「田中っス。ヨロシク」

 まるで『よくある苗字ベスト3』みたいになってしまっていたが、初対面である僕たちにはある共通点があった。
 それは、元カノが同じ女性であるということだ。
 彼女の名前は「神々廻七美ししべななみ」。神々が廻ると書いて「ししべ」と読む。もしかして自分の苗字が難解だから、ありふれた名前の男をパートナーに選んでいたのか。いやいや、ただの偶然だろう。誰かに頼ったり依存する事を嫌っていた彼女には、結婚願望のかけらもなかったし、ましてや捨てられたのは僕の方なのだから。

「とりあえず一年間、どうぞよろしくお願い致します」

 鈴木さんと田中君にぺこりと頭を下げる。
 これから、僕たち3人は一年間の同居生活を送るのだ。神々廻七美の住んでいたこの部屋で。

プリ小説オーディオドラマ