第3話

幼なじみ
35
2020/08/31 14:49
はぁ……さっきは散々な目にあった。
確かにイケメンで、かっこよかった。
女の子たちが惚れ込むのもよく分かる。
水瀬 律生
水瀬 律生
…僕なんかに手を貸してくれたし。
まぁ良いトコ見せたかっただけだろうけど
アイツは僕と一緒の赤ネクタイだったから……1年か
水瀬 律生
水瀬 律生
1年で、しかも入学してから
1ヶ月足らずであそこまで
人気者になるってすごい。
僕は逆の意味ですごい認知されているけど。
水瀬 律生
水瀬 律生
はぁ……早く癒して貰いたい……
嫌なことも全部吹っ飛ぶすごい力。
僕にとっての“魔法”みたいな物。
水瀬 律生
水瀬 律生
早く帰って元気を補充させてもらおう
楽しみに身を馳せていると、後ろから声をかけられた
水瀬 律生
水瀬 律生
ひっ……!?
巻屋 めい
いや、なんちゅー声出してるの
巻屋 めい
たまたま、前に律生が居るの見えたから!
……ほら学校じゃ話しかけにくくて。
水瀬 律生
水瀬 律生
めい、か……ビックリさせないでよ
巻屋 めい(まきや めい)。彼女は僕の幼なじみ。
元気で、誰にでも優しい、空気も読める。
ずっと前から僕の事を知っている。
巻屋 めい
私、学校のヤツら皆嫌い!
私は普通に学校でもどこでも律生と
話したいのに皆がダメって……。
律生は本当は凄くいい子なんだから。
……本当の『姿』だって私は知ってる
水瀬 律生
水瀬 律生
そうだよね……僕と話してたらめいが
周りからなんて言われるか分からないし。
……話しかけなくて正解だよ。
水瀬 律生
水瀬 律生
(……本当の姿……ね)
あの日の事が、脳裏によぎる。
ー本当に思い出したくない記憶。
めいは、僕の事をなんでも知っている。
故に思い出したくない事だって思い出させる。
巻屋 めい
でーも!何があっても私は律生の味方
それだけは忘れないでよ?
困ったらいつでも話しかけて来て!
家も近いんだしさ。
水瀬 律生
水瀬 律生
……気が向いたら、ね
じゃ、めいはそっちの道でしょ?
巻屋 めい
それぜっったい私を
頼ってくれないパターン!
……はぁ、じゃあねまた明日!
元気よく手を振るめい。
ー僕を気遣ってくれる馬鹿みたいにいい子。
誰にでも優しくて、いつでも明るい。

学校でめいを狙ってる子が多い事も知ってる。
だからこそ僕が話しかけに行ったらどうなることやら…
水瀬 律生
水瀬 律生
本当の姿……か。
自分で自分を殺して、蓋を閉めて。
そして今の僕に……。
めいは、昔の僕に戻って欲しいんだろう。
水瀬 律生
水瀬 律生
……でも今更もう無理。
刻み込まれた『不幸』は心に根を張り、定着する。

ー本来の僕を握りつぶしていく。
戻りたくても、戻れないから。

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