第4話

癒し
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2020/09/05 11:44
家は高校から歩いて通える距離。
電車賃もかからないから、有難い。
家の前には公園がある。
ー休日は子供たち。
楽しそうに声を上げて遊具で遊ぶ。
無邪気でとても可愛い。

ー夜は大人。
月の光に照らされ、静かにブランコに座る。
そうする人達は何かしら抱えてる人。
水瀬 律生
水瀬 律生
あそこは人間観察に適した場所…。
自分の部屋の窓から公園を覗けるから
不安を抱えてる人とかはすぐ見抜ける。
家に入る前に、そっと公園を見てみる。
ーまだ日もある。
子供たちがチラホラ遊んでるくらいだ。
ー今日は大人が迷い込むだろうか……?
水瀬 律生
水瀬 律生
まあ僕には関係の無いことだけど。
そう言い捨てて家に帰る。
家に帰っても、シンとした空気だけで誰かが
帰りを待っている訳でもない。
水瀬 律生
水瀬 律生
ただいま。
返って来ないと分かっていてもそう言ってしまうのは
日本人のクセなのか?
自分の部屋に行き、部屋着に着替える。
ーそして律生は本棚の前に立つ。
水瀬 律生
水瀬 律生
……んんんん……今日はどれにしようかな…
無数の雑誌が並べられた本棚
指を沿わせ、何を見るか考える。
水瀬 律生
水瀬 律生
よし、これにしよう
ーこれは『歌さん』が載ってる雑誌。
大事そうに胸に抱え、リビングへと降りる。
ーソファに腰掛け、雑誌を見始める。
水瀬 律生
水瀬 律生
うううぅ……幸せ……!
やっぱりカッコイイなぁ歌さん
美しい……綺麗……どの俳優さんよりも
何か引きつけるものがあるなぁ
雑誌をみてイケメンを眺めること。
それが律生の癒しの1つ。
ー誰にも言えない秘密。

口元を緩ませて、雑誌に見入る。
するとー
『ぁぁぁぁぁあ!!!!!また雑誌みて笑ってる!』
いきなり玄関が開き、大声がした。
水瀬 律生
水瀬 律生
はわぁぁぁあ!?
水瀬 夏生
お兄ちゃん、また歌さん見てるのー?
水瀬 律生
水瀬 律生
な、夏生(なつき)か……
ビックリさせないでよもう……
ただいま、は?
水瀬 夏生
ただいま!
水瀬 律生
水瀬 律生
病院帰り?
水瀬 夏生
そうだよ!
水瀬 律生
水瀬 律生
……そっか。
あ、ご飯作らなきゃだね
夏生、手伝ってくれる?
水瀬 夏生
うん!
水瀬 夏生。
ー夏生は僕の弟。

でも、僕とは違ってすっごく可愛い天使。
夏生も僕の癒し。
水瀬家は、色々な事情により複雑だ。
ー父さんはいなくなった。
ー母さんも実質いないに近い。
ー夏生は学校に通えていない。
ー僕は本当の姿を隠した。
水瀬 律生
水瀬 律生
今日何食べたい?
水瀬 夏生
んんんー、カレー?
水瀬 律生
水瀬 律生
カレーかぁ……最近作ってないし
そうしよっか。材料もあるしね。
水瀬 夏生
僕も野菜切るの手伝うよー
水瀬 律生
水瀬 律生
ありがとう、手ケガしないようにな?
水瀬 夏生
もう……子供じゃないんだから!
水瀬 律生
水瀬 律生
まだ小5だろ??
僕からみたら子供ですー。
2人だけでも、ちゃんと過ごせる。
夏生はちゃんとお手伝いもできるし。
夏生の両親代わりに僕がなればいいだけの話。

あんな小さい子に、絶対見せては行けない物を
見てしまったんだ。
いや、小さい大きいなんて必要ない。
誰だって見ちゃいけないもの。
水瀬 律生
水瀬 律生
(もう、あんな思いさせない。)
取り返しはつかないけど。
ー夏生には、楽しく生きてもらいたいから。

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