先輩との初めてのデートから2週間が経った。
毎日『おはよう』とか『おつかれ』『おやすみ』なんて、些細なメッセージのやり取りをするのが日課になって、
先輩との距離はグッと縮まった気がする。
先輩の塾がない日はいつも一緒に帰って、たまに"俺の息抜きに付き合って"って、遊びに連れ出してくれる。
……きっと私のためを思って、忙しいのに時間作ってくれてるんだろうなぁって思うと、また好きが積もる。
学校では学年が違うことも災いして全然会えなくて。
それこそ、あの泣きながら告白した日に、ばったり自販機の前で、しかも先輩と2人きりで会えたことはもう奇跡すぎる!と、今になって改めて思う。
"めんどいの嫌い"とか言いながら、ちゃんとメッセージに返信くれるのは
先輩なりに、私が寂しい思いをしないようにって思ってのことだと思うから
私はそれに甘え過ぎないように、いつもどこか先輩の前では背伸びしている。
先輩が気を遣わなくて済むように、本当の自分よりもちょっぴり"大人"を演じてる。でもそれは、私なりに先輩を思ってのこと。
由紀ちゃんには相変わらず『バカな子』って言われちゃったんだけど。
由紀ちゃんなりに私と先輩のこと応援してくれてるのは伝わってくるし、バカなのは生まれつき!と開き直ることにした。
休み時間
手には1番上手に焼けたカップケーキ。
カラフルにデコレーションしたそれを、透明な袋に入れて【勉強がんばってください♡】なんてメッセージを添えた。
……勢いでハートマークなんか書いちゃったけど、メッセージですら送ったことないのに大丈夫かな?
引かれたりしない!?
てか、ドキドキしすぎてちゃんと渡せるかな。
階段を駆け下りて、渡り廊下を抜けて、突き当たりの階段を1番上までかけ昇る。
正直、遠すぎて休み時間終わるんじゃ……?なんて途中で諦めそうになったけど。
どうしても、先輩の顔が見たくて、私は足を止めることはしなかった。
あそこ、と佐藤先輩が指さした先を目で追えば、そこには先輩と女の人が楽しそうに笑いあっていた。
何を話してるのかは聞こえないけど、教室の隅っこで2人だけの世界って感じ。
私にはあんな顔、見せてくれたことない。
……途端に、先輩と自分の距離は全然縮まってなんかなかったんだって思った。
たまに一緒にいられる時間が幸せすぎて、先輩も私のことが好きなんだって思い込んでたけど。
私、先輩から好きって言われてなくない!?
グルグルと頭の中を回るのは、笑い合う先輩と女の人。同じクラスに先輩がいたら、好きになるなって方が無理な話だと思う。
『彼女』の称号を手に入れて、浮かれてた。
だけどそれって、先輩の心を手に入れたのとはちょっと違って。
……私が欲しいのは、先輩の『彼女』っていう称号なんかじゃなくて、先輩からの『好き』って気持ちだったんだって。
考えたらそんなの、分かり切ってることなのに。
今さら気付くなんて、やっぱり私はバカな子なんだろうな。
〜叶多side〜
放課後
3限終わりの休み時間……
俺、何してたんだっけ。
佐々木が来たら、絶対気付くはずなのに。
……あぁ、そうだ。
ちょうど、涼川に声かけられて夏休みの塾の日程のことで話してたんだ。
でも、わざわざ会いに来たんなら、なんで声もかけずに帰った?まさか、涼川とのこと誤解した、とか。……いや、まさかな?
今日は塾がないこと伝えてあるし、教室で待ってるはず。……とにかく、会って確かめるか。
階段を駆け下りて、渡り廊下を抜けて、また階段を昇る。
正直、かなり遠い1年の教室。
だけど、佐々木に会うためなら苦じゃないって思う。
廊下には人が沢山いて、3年の俺はかなり目立つし、ジロジロ見られるのも良い気はしない。
『誰かの彼氏かな?』なんて、聞こえてくるヒソヒソ話がいやでも耳に入って、だったら何だよって思う。
勉強に集中しなきゃいけないこの時期に、佐々木のことで頭いっぱいになってる俺って……やばいんじゃないの?って思う。
これだから、彼女ってのは存在自体がめんどい。
今までの俺なら間違いなく告白を断ってたはずなのに、あの日の俺は……なんで『いいよ』なんて言っちまったんだろう。
教室の中から聞こえてくる佐々木の声。
見たことないくらい、楽しそうに笑う無邪気な顔になぜか胸が苦しくなった。
……俺の知らない顔。
こんな顔するんだって、素直に相手の男が羨ましくてモヤモヤした気持ちが胸に渦巻く。
なんだよ、俺がいなくても楽しそうじゃん?
わざわざ俺なんかと付き合う必要あんのかよ。
慌てたように何かを言いかけた佐々木を、隣から吉沢と呼ばれた男が庇う。
それにやけにイラついて。
もう、全部、どうでもよくなった。
完全に嫉妬してるって分かってても、ブレーキのかけ方が分からなくて。
俺自身、こんな気持ち初めてで……。
投げやりに吐き捨てて、2人に背中を向けて歩き出す。
最後に見えた佐々木の酷く悲しそうな顔が頭から離れなくて、もう後悔してるのに。
足は進むことをやめない。
ガキすぎる自分が、心底嫌になる。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。