風がやけに冷たく感じる、11月も中旬に差し掛かった今日この頃。
叶多くんはいよいよ、受験勉強が本格化して、放課後に苦手教科の個別講習を受けたり、塾へ通ったりと一緒に帰れないことの方が多くなった。
だから今日、こうして並んで帰るのは、なんだかすごく久しぶりだ。
フッと優しく笑った叶多くんに、付き合って4ヶ月が経とうとしている今も、こんなにもときめいてしまう。
あぁ、もう……好きすぎだろ、私!
叶多くんの横顔を盗み見て、目が合いそうになったところで思わずパッと逸らした。
実は今週の土曜日、11月17日は私の16歳の誕生日なのだ。
叶多くんと付き合って初めての誕生日。
なのに、よりによって土曜日。
……叶多くんと会えないじゃん!と、カレンダーを見て落ち込んだのは、もうかなり前の話だ。
1月に受験を控えている叶多くんは、勉強のラストスパートで。休みの日だって、図書館や近所のファミレスで勉強を頑張っていることは知っている。
せっかくの誕生日だし、会いたいなって、おめでとうって言って欲しいなって……そんな気持ちは確かにあるけれど。
受験を控えた大事な時に、わざわざ誕生日をアピールして変に気を遣わせるのは嫌だなぁとも思う。
結果、誕生日だってことすら伝えられないまま誕生日まで残すところ3日になってしまった。
私の言葉に、ほんの少しだけ照れたように顔を背けた叶多くん。
ほんのり頬が赤い。可愛いな。
意地悪!と頬を膨らませれば、叶多くんの口元はまた楽しそうに弧を描く。
……もう、ドキドキさせられっぱなしだ。
うそ……!偶然だとしても、誕生日に叶多くんとデートできるなんて……!幸せすぎる!
神様、ありがとうこざいます!
〜誕生日 当日〜
迎えた11月17日。
叶多くんと会えるのが楽しみすぎて、嬉しすぎて。あまりよく眠れなかった。
ドキドキして、ソワソワして。
16歳って……結婚できるじゃん!なんて、1人で舞い上がったりして。
昨日の自分と、何が違うかって言われたら何も違わないけれど、叶多くんに少しだけ近づけたような気がして頬が緩む。
待ち合わせ場所にいる叶多くんと合流して、早速いつにも増して甘い叶多くんに心臓を撃ち抜かれた。
……誕生日だからかな?
いつもよりずっと、ドキドキしちゃうよ。
自然と重なった手は、ギュッと恋人繋ぎで握りしめられた。
〜カフェ〜
叶多くんに手を引かれるままに歩いて、辿り着いたのは『ルミエール』というオシャレな雰囲気のカフェだった。
席に座るなり、手馴れた様子で注文を始めた叶多くんに、勧められるがままカフェモカを注文した。
驚いた私の声が店内に響いたのとほぼ同時に、すぐ後ろで店員さんの声が聞こえた。
そして、私たちのテーブルにコトッとお皿を置いて、ニコリと微笑む店員さん。
テーブル上に置かれたのは、注文した覚えのないプレート。
4号サイズよりも少し小さいホールケーキにロウソクが1本。炎がオレンジ色にゆらゆらと揺れている。
その周りにオレンジ色のソースでお花が描かれていて……そして、チョコレートで書かれたメッセージに私の涙腺は一瞬で泣く準備を整えた。
” Happy Birthday MAYU ”
叶多くんが何気ない会話を覚えてくれていたこと、こうしてサプライズで誕生日をお祝いしてくれたこと。
嬉しくて、幸せで、叶多くんの笑顔と、一緒に過ごす時間と、16歳の私。その全部が、今宝物になった。
───フッと一息で消えたロウソクの火。
ゆっくり顔を上げれば、満足気に微笑む叶多くんと目が合う。
ぶっきらぼうに差し出されたのは、シンプルなスエードグレーの細長い箱。
ドキドキしながら箱を開ければ……。
そこには、丸みのある可愛らしいムーンデザインのネックレスとお揃いのブレスレッド。
途中スターチャームを挟み込んであるチェーンは、キラキラと輝いて見える。
……叶多くんが、私のために選んでくれた。
それだけでこんなにも胸がいっぱいになって、幸せが大渋滞を起こしてる。
色々な感情が溢れて、目頭が熱くなる。
泣かないようにと笑顔を作るけど、多分下手くそな笑顔になってるだろうな。
初めて、好きな人と一緒に過ごす誕生日。
こんなにもたくさんの幸せをもらえるなんて、 初めて知った。
叶多くんと出会って、たくさんの幸せを感じて、もっともっと好きが溢れていく。
叶多くんの言葉に、我慢していた涙が堪えきれず頬を伝うのを感じながら、私は力強く頷いた。
あなたがそれを望んでくれるなら、
来年も、再来年も、その先もずっと。
……叶多くんの隣で歳を重ねていきたい。















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。