第61話

弱者の時間-2時間目-
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2026/01/12 13:13 更新
〈sideあなた〉


天城)「カルマくんのせいだからね…」

赤羽)「悪かったって」

潮田)「まさか2人もさくらちゃんに気に入られるとはね…笑」


 次の日に渚くんに事情を説明した。渚くんは驚いてたけど、頑張ろうって言ってくれた。

 それにしたって、どうして私もなんだろう。カルマくんと渚くんは教えることができるけど、私はさくらちゃんの勉強を教えられるほどの学力はない。事実、カルマくんと渚くんが勉強の面倒を見ている間私はさくらちゃんの向かい側に座って見ているだけ。


天城)「あの…さくらちゃん」

鬼屋敷)「?何だよ急に…」

天城)「どうして私にも協力してほしいの?私はさくらちゃんに教えられることなんてないのに…」

鬼屋敷)「は?そりゃ…」

天城)「そりゃ…?」

鬼屋敷)「…何でだろ」

天城)(扱い雑すぎない、!?)

潮田)「じゃあ、天城さんも勉強したらどうかな?」

天城)「え?」

潮田)「僕がさくらちゃんを教えるから、カルマくんが天城さんの勉強を見てあげるんだ」

天城)「え、いやでもカルマくんだってさくらちゃんに教える仕事が…」

赤羽)「俺はOKだよ〜?おてんば娘さんの相手は渚くんが相応しそうだし」

天城)「ま、待って…私まだいいって言ってない…」

赤羽)「何言ってんのあなたちゃん?…この歳で分数の計算が出来ないのはだいぶマズイよ?」

潮田)「勉強ってライバルがいると捗るって聞くし…頼めないかな?」

天城)「う、うぅ…」


 断りきれず私は勉強を教えてもらうことになった。
赤羽)「…でこれはこう、だから足して…あー、違う」

天城)「え、でもカルマくん足すって…」

赤羽)「分母は足しちゃ、いけないの…はぁ、てかあなたちゃんって勉強苦手だったんだね。意外…」

天城)「…お馬鹿で悪かったわね、てか私を何だと思ってるの…」

赤羽)「いや、なんて言うか…今まで勉強苦手だと思う事なかったから」

天城)「…不登校ではあったけど、漢字なんかは任務の報告書を書くときに難しい字をたくさん書くから覚えてたし。でも算数なんて任務に今まで必要なかったから」


 てか何でこの分母は足しちゃいけないの?分かりにくい…。


赤羽)「ねーねー。俺が教えてあなたちゃんが分数の計算できるようになったらさ、俺にご褒美ちょーだいよ。例えば…俺のお願い一つ叶えるとか」

天城)「嫌だけど?だって私頼んでない」

赤羽)「うわー、給料ゼロで働かせるなんてブラックだー(棒)」

天城)「…」


 黙々と算数のワークに取り組んでいると、その様子を見ながらカルマくんが話しかけてきた。


赤羽)「五条さんって確か教免あるんでしょ?分かりやすく伝えなくともこれくらいは教えれるだろうに…あなたちゃんは、教えてもらわなかったの?」

天城)「ん?そうだけど?…だって必要ないから。任務で算数が必要なんて聞いたことないし、それに私は…」


 言おうとしたが、やめた。

 『どうせ大人になる前に死ぬのだから』、ということは。


天城)「…何でもないや。ほら、カルマくん次教えてよ」

鬼屋敷)「…」
 赤羽)「お、いいじゃん〜当たってきた」


 半ば強制的に教えてもらってるけど、成果が出てきた。勉強は自分には関係ないし、出来ないから嫌いだった。でも…


天城)(出来たら案外、楽しいのかもね…)

鬼屋敷)「にしてもアンタたちとも明日でお別れなのね」

天城)「そうだね…明日で丁度2週間だし」

鬼屋敷)「はーあ、うるさい輩が消えてくれて気持ちがいいわ。あ、渚はこれからも私に教えに来なさいよ?」

潮田)「あ、あはは…」

鬼屋敷)「あなた、私決めたんだ」

天城)「え?何を」

鬼屋敷)「ふふん…明日、私学校にテスト受けに行く」

天城)「え、!?」


 衝撃だった。不登校の子がもう一度学校に通うなんて、意思を持つことすら至難の業だ。一体どうして…?


鬼屋敷)「だってさ、よくよく考えたら私悪いこと何もしてないし。怯えてたらアイツらの思う壺じゃん?カルマに言われて気づいたの」

赤羽)「お、いいじゃん〜」


 語るさくらちゃんの顔はきらきらしていた。


鬼屋敷)「だから見返してやる。私なりのやり方で、私だけの『刃』で!」


 2週間しか関わっていないけど、さくらちゃんは大きく成長していた。
 最終日、松方さんの怪我も無事完治し、リフォームも済んだこの施設にさくらちゃんが帰ってきた。


鬼屋敷)「渚!カルマ!あなた!見てこれ!!」


 見せてきたのはマルでいっぱいなテスト用紙。


鬼屋敷)「テストの時間だけ来てテスト受けて、終わったらすぐ帰ってきたの!」

赤羽)「渚くんの教え方がうまかったんだね」

潮田)「ううん、さくらちゃんが頑張った結果だよ…!」

天城)「すごい…すごいよ、さくらちゃん…!」


 松方さんにも見せ合えるとこちらに駆け寄って私にこそっと話しかけてきた。


鬼屋敷)「私、勇気出したよ…次はあなたの番」

天城)「え、私…?」

鬼屋敷)「何隠してるかは知らないけどさ、案外皆受け止めてくれるんじゃないの?…特に、アンタが1番信頼してるカルマには」

天城)「カルマくん?どうして」

鬼屋敷)「は?アンタアイツのこと好きなんじゃないの!?」

天城)「違うけど、?カルマくんはクラスメイトなだけ!」

鬼屋敷)「ふーん…じゃあアイツだけなのかぁ…」

天城)「え?」

鬼屋敷)「いや、何でもないけどー?まぁとにかく、そういうことだから!私が勇気出したんだからアンタも一歩踏み出しなさいよ!」


 指を突き出される。


天城)「…うん、いつかちゃんと、話すよ」


 2人で小指を出して指切りげんまんして、2週間の課外学習は幕を下ろしたのだった。

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