〈sideあなた〉
岡野)「んじゃ、早速スクランブル交差点行く?」
時刻は午後6時半をもうすぐで迎える。
天城)「あ、そうだ…みんな。その前に用事済ませちゃってもいいかな?」
磯貝)「用事?何かあるのか?」
天城)「うん、花屋に少しね」
マップで事前に送られた店の場所を調べて、歩く。
天城)「えっと…この建物の…地下2階…」
前原)「花屋に用事って、誰かに渡す予定でもあんのか?」
天城)「ううん、違うよ。ほら、ビッチ先生に手渡した花束があったでしょ?支払い期限が今日までだったみたいでさ。本当は全員で割り勘するつもりだったはずなんだけど、集金するの忘れててね」
片岡)「あら、そうだったのね。今度じゃあ天城さんに渡さなきゃ」
エレベーターに乗り込み地下2階のボタンを押す。
扉が閉まる時、1人が口を開いた。
潮田)「天城さん…それ、本当に言ってる、?」
天城)「ん?」
潮田)「僕たち…その場で払ったと思うんだけど、」
天城)「…………え、?」
渚くんの言葉を脳内で噛み砕き終える頃、エレベーターは地下2階に着いた。
片岡)「渚、それほんと、?」
潮田)「うん…だよね、茅野」
茅野)「うん…」
赤羽)「あなたちゃん、それってさ…電話とかで来たってこと?」
天城)「うん、そうだよ…あれ、何で私の電話番号知ってるの、?」
教えた覚えなんてないはずなのに。一気に言葉に表せない不安が広がる。普段使いのスマホと、任務用のスマホ、2つを使ってるけど今回電話してきたのは…任務用のスマホ。仮に花屋の人に教えるとしても、普段使いの電話番号を私なら真っ先に選ぶはずだ。何で?どうして?
ひとつ、またひとつと不可解な要素が増えて、脳内が不協和音を聞いた時のような、言いようのない不安感に苛まれる。
花屋)「天城さんかな?お友達も連れてきてくれてるみたいだね」
普段ならありえない薄暗さの地下2階。その声と気配は突然に現れた。
天城)「っ、…何で私の電話番号を知ってるの…その番号は、術師しか知らないはず。非術師のあなたがどうして…」
花屋)「あれ?そうだったんだ?どうしてだと思う?」
天城)「どうしてって…」
本能が頭の中で警鐘を鳴らす。何がとは言えないが、彼はまずい。逃げろ、そう伝えてくる。なのに、この人から目を離せない。正確に言えば、離してしまったら命が危険に脅かされる気がして。
花屋)「答えは簡単です。呪術高専に、『裏切り者』がいたから」
前原)「裏切り者、!?」
岡野)「そんな、何で!」
天城)「貴方…術師じゃないでしょ、?高専の誰かと貴方が組むメリットがない、揺さぶりをかけるつもりなら無駄よ」
花屋)「不正解です、天城さん。と言っても、彼とは同じグループにいたというだけ。『上司』の命令通り動いたまでですよ」
磯貝)「上司?」
高専に裏切り者…悟の言った通りだ。でも一体誰が、どうして非術師の彼に?頭の違和感を払拭できない中、茅野さんが切り込む。
茅野)「そんなことより、ビッチ先生は…?」
花屋)「安心してください、殺してはいませんよ」
全員)「!?」
花屋)「イリーナは君たちにとって大切な存在だね?そんな彼女がある日消えたら君たちは動揺して探すことだろう。しかし心当たりがなかったのかな?なかなか君たちが捜索する様子を見ることはできなかった。だから新たに今日、天城さんを拐う算段だったんです」
天城)「非術師の貴方に私が負けるとでも?…驕るのはいい加減にしてほしいんだけど」
花屋)「不正解です、天城さん。君は大きな勘違いをしている。僕はただの花屋じゃありませんよ」
ビリビリっと顔を剥がしてゆく。剥がれた皮膚から赤い薔薇のような花弁が鮮やかに舞う。それは何かのパフォーマンスを見ている気分になった。しかし、花弁が床に着き顔の筋肉と骨が露わになる様子に、絶句する。
赤羽)「にん、げん…、?」
死神)「残念、不正解です赤羽くん。僕は死神、殺し屋です」
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。