〈sideあなた〉
岡野)「なかなか来ないね、五条さん…そうだ、ずっとあなたちゃんに聞きたかったこと、あるんだよね」
天城)「私に?」
岡野)「お父さん代わり、だっけ?五条さんって。前に2回会ったことはあるけどさ、あなたちゃんにとって五条さんはどんな人なのかなって少し気になっちゃって」
磯貝)「それ、俺も聞きたかったんだよな。あの人イマイチ性格掴みにくいっていうか…。天城にとってあの人はどう見えてるんだろうなって思ってた」
天城)「悟ねぇ…」
赤羽)「…あなたちゃん、無理に話す必要ないんじゃない?」
天城)「あ、ううん。躊躇ってたわけじゃないよ。噂をすれば何とやらって言うし…私の話でよければ暇つぶしがてら話そっか」
***
(※ここからは少しグロ要素あります、苦手な方はスクロールお願いします💦)
悟と出会ったのは、私が孤児院で呪霊を初めて祓ってから数日経った日のことだった。
孤児院の騒動はすぐに周辺に知れ渡り、私が呪霊を祓い終えてすぐに警察が訪れた。パニック症状を引き起こしていた私の唯一のお友達の芽衣沙ちゃんは警察の人に事情聴取をされるなり、私が騒動を起こしたと喚いた。
この時、はっきりと違うって言えばよかったのかもしれない。でも抗う気は起きなかった。これ以上、私の大好きな芽衣沙ちゃんが壊れるところを見たくなかった。芽衣沙ちゃんのためなら私は、どんな事実無根なことだって認める。それがきっと、芽衣沙ちゃんの心の平穏に繋がると思って…。
天城)「…そうだよ。全部全部、私が壊した」
そこからの記憶はあまりない。警察官の事情聴取からしばらくして、知らない大人にまた色々と尋ねられた。もう全部どうでもよかったから、反論もせず認めた。着いてきなさい、そう言われたから何も言わずにその大人の後に続いて歩いた。車に乗せられて、首元に注射を刺され、私は意識を手放した。
次に目を覚ました時、私はそこらの壁やら天井やら床やらに謎の札が貼られて埋め尽くされた部屋に拘束されていた。
五条)「お、目ぇ覚ましたみたいだね?僕は五条悟、君の死刑執行人だよ」
悟と初めて出会ったのは、私の死刑執行日だった。
天城)「…へぇ」
五条)「へぇって、笑。自分のことなのに興味を持ってないみたいだね」
強がりでも何でもなかった。本当に、何の感情も浮かばなかった。自分のことのように感じなかった。
五条)「うーん…一応罪状の説明をしておこうか。2012年12月25日未明から明け方にかけて術式を使用し、孤児院『若葉宮学園』にて1級呪霊1体の祓除及び職員5名と児童17人を殺戮したことによる呪術規定9条違反。9条は『非術師の保護』ね」
天城)「…はい」
五条)「こういう理由で呪術総監部と御三家当主の話し合いの結果天城あなた、君の秘匿死刑が決まった。同時に僕が執行人を請け負ったってわけ」
天城)「…そうなんですね」
五条)「はー…君、自分のことに無関心すぎない?どう考えてもこの判断はあまりにも理不尽、君が望めばこのもう一度僕が審査に出せるってのにさぁ」
天城)「…別にどうだっていいです」
五条)「……君はもしかして、死にたいのかな?」
天城)「…」
五条)「君に死刑を執行するにあたって僕はこの事件について色々見たり調べたけどさ、明らかに君…嘘ついてるよね?」
天城)「…別に、」
五条)「新野芽衣沙…彼女の証言と現場が明らかに矛盾していた。まぁ新野芽衣沙は非術師のようだったからあれは気が動転してたんだろう。君は孤児院の人々を殺してなんかいない。呪霊を自力で祓った、ただそれだけ」
呪霊…あの怪物のことなんだろうな。芽衣沙ちゃんが非術師なら、私が術師…か。
五条)「僕は真実に辿り着いたから会議の際に異議を唱えた。だけど多数決で君の秘匿死刑は決まった。どうしてか分かるかい?…君の『強さ』を恐れたからさ、僕以外の御三家も、上層部も。君の術式は『呪力操術』、術師によっていくらでも使い道を広げられる…ある意味チート級なモンでね。それと事件当時の呪力の残穢を確認したよ。あれだけの時間術式を訓練もせずに使えたのは、君の呪力量が凄まじいからだ。家系も調べたけど、由緒正しい呪術の家の血筋でもないただの一般人の家庭に生まれたようだね。そんな君がこの年にして1級呪霊を祓ったんだ。腐った野郎共は君を『脅威』に感じている…だからどんな理不尽な罪状だとしても多数決という数の圧で君を強制的に殺すんだ。そんな道理もクソもないビビり達に君は自らの生死を委ねたい?」
この人は全て見抜いている。そう、私は悪くない。冤罪なのも分かってる。だけど、だけど…。
天城)「…私を、殺してよ」
私の本心は死にたがっていた。
天城)「貴方は多分、強いんだと思う…だから、貴方になら、私を殺せるかもしれない…殺して…殺してよ、!」
どこかで私は感じていた。私は『普通』には死なないのだ、と。パパとママが亡くなった後、私も後を追うようにオーバードーズを決め込んだことがあった。しかし、目を覚ました時医者には「致死量を遥かに超えていた、普通なら死んでいた」と告げられた。施設でも何度か試したけど、どの方法も私の命にトドメを刺すことはなかった。そしてあの呪霊の騒動。かなり強い敵にも私は死なずに勝ててしまった。もう生きたくなかった。私が生きると誰かが苦しむから。パパもママも、施設の人たちも、芽衣沙ちゃんも…。
天城)「もう生き地獄は嫌だっ…!楽になりたい、ならせてよ…」
悟はしばらくして私に近づいた。
五条)「ちょっと君のこと、視てもいいかな?」
アイマスクを外しながら私を見つめるその瞳は、この世の全てを見通すかのように透き通った硝子玉のようだった。
五条)「…なるほどね、よし決めた。あなた、君の死刑執行日は延期しようか!」
天城)「…え?」
五条)「胡散臭いようで悪いけど僕、この六眼で何でも見通せちゃうんだよね〜。それでまぁ君のことを色々と見させてもらったよ。この世界にはさ、『縛り』っていう自らと他者の間に誓約を立てることで能力の底上げや特殊効果を発揮させる呪術のルールがあるんだ。まぁそれでごく稀に、自身が望んでいなくとも生まれつきその誓約を課されてる『天与呪縛』を持つ人がいる。それこそが君だ。君はチート級の術式とそれを成立させるための膨大な呪力と引き換えに、生まれつき寿命を差し出してるのさ」
天城)「寿命…」
五条)「君の寿命は何があろうと例外なく、2019年3/14の深夜0時に尽きる。恐らく君が高1の時に確実に死ぬね。つまり言い換えると、今のあなたは『期間限定の不死身』を得ているってわけだ」
天城)「じゃあ、私は死ねない…?」
五条)「そんなことないさ、君の執行日が延期になっただけ。その日が来たら必ず死ぬよ。ただ…それまでの間、ここにいるのも時間の無駄だろう?せっかくの君の才能だ。ここはひとつ、僕たちと協力して社会貢献してよ」
多分悟は、私が本当に罪を実感していると思ったんだろう。悪いことは何もしていないのに、過去の影響故に存在自体に罪の意識を持っていた私を悟は無理やり自由にはさせなかった。『罪滅ぼしのための社会貢献』という名目の元、術師として、1人の人間として生きることを許してもらえて、本当に良かったと思えている。
***
天城)「…そうだなぁ、自分勝手だけど、そのおかげでちゃっかり人を救えちゃう…そんな人かな」
茅野)「えーっ!?五条さんって自己中なの!?」
天城)「うーん、まぁ基本自分軸で生きてるからね。この前なんか恵が任務で死にかけてる間悟はお土産買ってから応援に駆け付けてたよ」
潮田)「命よりお土産優先…笑」
赤羽)「あなたちゃんも、五条さんに救われた?」
天城)「…うん、そうだね。悟に出会ってなかったら、多分今私はここにいないだろうし」
いつもは口にしてないけど、本当は少しだけ感謝してるんだよ、悟。
時刻は午後8時半…悟と最後に連絡を取ってからもう1時間半以上も経っていた。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!