第16話

現れた男は
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2023/05/25 23:36
ウジside _______________







人造人間。



あなたから、俺は人造人間だと、そう言われている。



人造人間は心がないらしい。心がなければ感情というものがわからない。そして、意志もない。
いわゆる、人形。それが俺。





「普通の人間と同じように生きれるように、協力するね。」





ある日、あなたはそう言った。
その日から、あなたは俺にいろんなものを教えてくれた。
気になったものを「あれは何」と聞くと、あなたは教えてくれた。聞きたいことじゃなくても、教えてくれた。

いろんなことを体験させてくれて、晴れた日には外へ連れて行かれ、俺を景色と触れさせた。



開いた窓から聞こえてきた「虹」という言葉。
「虹って何」と聞くと、虹についてたくさん教えてくれた。


その日は虹は浮かんでなくて、ずっと見上げ続けても現れることはなかった。

見上げ続け、首が痛く感じて来た時、あなたは「いつか、見に行けるといいね」と言った。



その言葉に、トクトクと身体の中から音が聞こえたのを、覚えてる。





俺は、心も感情も意志もない人造人間という人形。

なのに、初めて虹を見てみたいと思った。






それから毎日空を眺めてるけど、なかなか虹は現れない。雨上がりにあなたと外へ出てみても、7色のアーチは空のどこにもなく、現れることなく湿った地面が乾いていく。


その度に、無い心にモヤがかかったような気がした。




(なまえ)
あなた
ウジ。
名前を呼ばれて振り向くと、あなたは人間を連れてきていた。
それを見た時、胸がチクチクし、そして、ざわめいた。



男は俺を頭からつま先までギラギラと光ってるような目で見た。
この男は、なんだ。
これが、人造人間か……。普通の人間と何ら変わりない見た目。童顔だから子供っぽい印象だな。肌が白く、手も綺麗。高校生が、まさかこんな人体を造り出せるとは。
男が俺を分析している間、あなたに目を向けると、いつも目が暖かいはずのに、この時は昨日の空のように曇っていた。


俺は聞いてみることにした。



WOOZI
WOOZI
その人、誰。


(なまえ)
あなた
研究所の人間であり、政府の人間である。そんな人だよ。
再び目線を人間に移す。
心や感情も持たない、意志のない人形が、私のことを聞いた……。これは素晴らしい。


あなたは何も言わず、ただ遠い目をしていた。



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