第20話

逃げ出そう
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2023/05/27 06:27
ウジ side_______________








実験が終わった。




何もない白い空間に、また、ひとりで放置された。





傷は治りかけても、また傷ができて治らない。
誰も手当をしない。





今日は他の人造人間を見た。顔が潰れていたり、身体がおかしな方向へ曲がっていたりしていた。何も喋らない、意志もない、感情もない、人形だった。







俺は手のひらを眺めた。







すると、空間の扉が開いて、声が聞こえた。









(なまえ)
あなた
ウジ。







俺は顔を上げた。










あなた。




あなた。








WOOZI
WOOZI
あなた。



あなたがそばまで来ると、俺を抱きしめた。
(なまえ)
あなた
ごめんね……っ、痛かったよね……っ。こんなにボロボロになって……っ。


暖かい。


ずっとこのままでいたい。




そう思うのは、なんで。





俺は人造人間だ。だから、何も求めない。何も望まない。何も感じない。なのに。なんで、こう思うの。
(なまえ)
あなた
……逃げ出そう。ウジ。
あなたは抱きしめる力を強くして、そう言った。
(なまえ)
あなた
こんなところから、逃げ出して、帰ろう。ね?
もうすごく痛い思いなんて、させないから…。
肩に顔を埋められる。


あなたから香ってくる匂い、体温、身体の柔らかさ、声で、俺の心臓の鼓動が、早くなっていった。



ねえ、あなた。





これって、なに?




この気持ちって、なに?






俺に、心は……。







俺は腕を背中に回して、あなたを抱きしめ返した。
WOOZI
WOOZI
あたたかい。
(なまえ)
あなた
……っ、ウジ?
WOOZI
WOOZI
あなた、あたたかい。
肩から顔を上げたあなたは、涙を流していた。



WOOZI
WOOZI
悲しい?
(なまえ)
あなた
……っ、悲しいんじゃないよ、また会えて、嬉しいんだよ。
WOOZI
WOOZI
嬉しいって、なに。
(なまえ)
あなた
心が、踊るような、晴れやかな気分って言うのかな……。
あなたの手を掴み、俺の胸に当てると、目を見開いた。
WOOZI
WOOZI
鼓動が、早い。心臓、胸から出そう。
これ、なに。
(なまえ)
あなた
…………っ、それ、は。


あなたは口を閉じて俯く。それから、俺から離れた。


離れてほしくない。そう思ってしまい、手を伸ばした。
(なまえ)
あなた
……っ、ウジ、行こう。
見つかる前に、ここから逃げ出そう。
伸ばした手をあなたが掴んで、俺を引っ張った。






﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏



ウジさんなにか芽生えて……。

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