ウジ side_______________
晴れの日。
あなたに手を引っ張られて、外へ出た。
いつもは「散歩しよっか」と言うはず。
でも今日はそんな言葉は言わなかった。
今日は、散歩じゃない。
白い服を身にまとわされ、暖かい日差しの中を歩く。
今日も、あなたは遠い目をしていた。
そう言われて、俺は無い心が少し引っかかった。
あなたは俺に笑みを向けた。しかし、その笑みはいつもの暖かい笑みじゃなかった。
あなたは小さな声で、呟いた。
着いた先は、大きな白い建物だった。
中に入っても白が続く。歩いてくる人間も白い服を身にまとっている。
俺はあなたの手をキュッと握り返した。
静かに顔を向けたあなたは、少し目を見開いていた。
新しい、家。
そう言ったあなたは眉をひそめて俯いた。
どこか具合でも悪いのか。
そう思ったけど、違うような気がした。
あなたの目からポタポタと雫が落ちるのを見たから。
なんで、泣いてるの。
名前を呼んでも、肩を震わせて鼻を啜ってばかりでこっちを見ない。いつもは返事をしてこっちを見るのに。
こっちを見るまでずっと呼び続ける。
なんで。
教えて。
教えて。
必死に手で涙を拭うあなたを俺はじっと見つめた。
なんで。
どうして。
悲しいの。
会えなく、なる。
かもしれない。
ただの予想なのに、決まったことじゃないはずなのに。
少し胸が締めつけられた。
これに関しては、胸が締めつけられることはなかった。
人が悲しむ時。人は何をしてるの。
止まらなさそうな涙、どうやって止めるの。
あなたはどうやったら、笑えるの。
この間来た男が現れた。
その瞬間、あなたの手が俺の手を離した。
俺は人造人間。
人の指示に従うもの。
なのに、俺は動こうと思えなかった。
すぐ近くにあるあなたの手を握ろうと手を開く。
指先があなたの冷たい手に触れた瞬間、その冷たい手は俺の手を避けて、背中を押した。
振り向くと、あなたは腕で顔を隠してしまっていた。
別れの言葉を告げるあなたに手を伸ばすと、後ろから手を引かれて、あなたから遠ざけられていく。
なにがなんだかわからない。
どこへ連れて行かれるの。
教えて。
教えて、あなた。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!