14028。
今日まで造ってきた、人造人間の数だ。
ちゃんと数えていたわけじゃないが、別の研究員が丁寧に数を数えていたから、知っているだけだ。
私は、あの男が家に来てから、ずっと人造人間を造り出してきた。
しかし……。
人造人間はすぐに死ぬ。
何も実験しておらず、綺麗な状態のままだとしても、1週間もすると死んでいた。
健康な臓器を使っているはずなのに、ウジのようには生きられないのか。
何がいけない?何が足りない?
冷たくなり、瞳孔が開いて、顔色の悪くなっている人造人間の頬を撫でて考えた。
私から死んだ人造人間を乱暴に奪い取り、処分するためにどこかへ行った。
その時、なんとなくわかった。
愛情。
それがないから、すぐに死ぬんだ。
神聖ローマ帝国ホーエンシュタウフェン朝の皇帝フリードリヒ2世が赤子で実験をしていた。
目を見てはいけない。
笑いかけてはいけない。
抱いてはいけない。
語りかけてはいけない。
これらの条件で、実験を行ったらしい。
結果は、55人中、27人が2年以内に死亡。残った子供も17人が成人前に死んでしまい11人は成人後も生き続けたが、その多くには知的障害や情緒障害が見られたという。
やはり、生物には愛情が必要なのか。
だとしたら、ウジはもう、死んでいるんじゃ。
そう思うと、私の胸が押し潰されるくらいに苦しくなった。
あの時、ウジを手放さざるを得なかった。
でないと、私もウジも殺されてしまうから。
でも、ウジも今殺されそうになっているように思える。
さっき、研究員にウジのことを聞いてみると、まだ生きていると言っていた。それだけで、私は安堵の息を漏らした。
それもそうかもしれない。
そう思ってしまうと、私はそれ以上何も言えなくなった。
その研究員が連れている人造人間の女の子。実験のし過ぎで、壊れかけていた。傷が多く、痣も多く、目は潰れていて、とても見てられない。
それなのに、女の子は顔色ひとつ変えずに、研究員に手を握られ、何を見ているのかわからないような目をしていた。
女の子は、次の実験で、壊れるだろう。
研究員と女の子は実験室へ向かっていった。
「実験用に人造人間を造り続けてください」
「成功すれば、我が国の兵器とするのです」
「協力しなければ、あなたを処分します」
「ウジも処分します」
ウジを殺させたくない。私も死にたくない。
ウジはまだ、心や感情を知ることができてない。
それに……。
私たちはまだ、虹を見ていないから。
私は拳を握りしめて、覚悟を決めた。
﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。