第19話

愛情
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2023/05/26 13:29




14028。


今日まで造ってきた、人造人間の数だ。


ちゃんと数えていたわけじゃないが、別の研究員が丁寧に数を数えていたから、知っているだけだ。


私は、あの男が家に来てから、ずっと人造人間を造り出してきた。






しかし……。





(なまえ)
あなた
…………、心肺停止。





人造人間はすぐに死ぬ。
何も実験しておらず、綺麗な状態のままだとしても、1週間もすると死んでいた。
健康な臓器を使っているはずなのに、ウジのようには生きられないのか。


何がいけない?何が足りない?




冷たくなり、瞳孔が開いて、顔色の悪くなっている人造人間の頬を撫でて考えた。
研究員
人造人間はただの人形です。情をかける必要なんてない。
私から死んだ人造人間を乱暴に奪い取り、処分するためにどこかへ行った。




その時、なんとなくわかった。












愛情。











それがないから、すぐに死ぬんだ。















神聖ローマ帝国ホーエンシュタウフェン朝の皇帝フリードリヒ2世が赤子で実験をしていた。


目を見てはいけない。

笑いかけてはいけない。

抱いてはいけない。

語りかけてはいけない。


これらの条件で、実験を行ったらしい。


結果は、55人中、27人が2年以内に死亡。残った子供も17人が成人前に死んでしまい11人は成人後も生き続けたが、その多くには知的障害や情緒障害が見られたという。


やはり、生物には愛情が必要なのか。





だとしたら、ウジはもう、死んでいるんじゃ。







そう思うと、私の胸が押し潰されるくらいに苦しくなった。











あの時、ウジを手放さざるを得なかった。
でないと、私もウジも殺されてしまうから。
でも、ウジも今殺されそうになっているように思える。





さっき、研究員にウジのことを聞いてみると、まだ生きていると言っていた。それだけで、私は安堵の息を漏らした。
研究員
愛情?
(なまえ)
あなた
愛情を与えなければ、すぐに死んでしまうのだと思います。愛情を与えることをしましょう。
研究員
必要ないです。所詮人形ですよ。ウジだって、雑に扱われても何も言わずに生きています。愛情なんて関係ないです。
それもそうかもしれない。


そう思ってしまうと、私はそれ以上何も言えなくなった。


その研究員が連れている人造人間の女の子。実験のし過ぎで、壊れかけていた。傷が多く、痣も多く、目は潰れていて、とても見てられない。



それなのに、女の子は顔色ひとつ変えずに、研究員に手を握られ、何を見ているのかわからないような目をしていた。
研究員
これから実験なので。
(なまえ)
あなた
…………。
女の子は、次の実験で、壊れるだろう。



研究員と女の子は実験室へ向かっていった。




「実験用に人造人間を造り続けてください」
「成功すれば、我が国の兵器とするのです」
「協力しなければ、あなたを処分します」
「ウジも処分します」




ウジを殺させたくない。私も死にたくない。


ウジはまだ、心や感情を知ることができてない。





それに……。













私たちはまだ、虹を見ていないから。
















私は拳を握りしめて、覚悟を決めた。



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