その時、いきなり廊下の方からすさまじい歓声が聞こえてきた。

女子達の黄色い歓声。何やら観客のような人だかりまでできている。

私がパッと目をやると、そこにはあの男がいた。

結愛も見慣れたような様子で振り返る。

そう。いま通りかかった男は、うちの学園の王子様とかって呼ばれてる、橋本涼。

゛男版の有栖川あなた ゛なんて言われていて、女子で知らない人はいないくらい有名なの。

超絶イケメンなうえに、頭も良くて、スポーツ万能で、
親も携帯電話の通信事業やインターネットサービスなどを扱う国内大手グループのトップ。

うちの学校の女子は、みんな彼を狙っているってウワサ。

………正直、私はあんまり気に食わないんだけどね

あんまり話したことがないからどんな人なのかよく知らないけど、いつもテストで学年一位を私と競い合ってるから、邪魔な存在。

きっとナルシスト男に違いない。

いつもスカしてるのもなんかムカつくし。

私は絶対、みんなと同じようにキャーキャー騒いだりなんてしない。

唯一認めるのは、顔がいいってとこくらいかな。

頭はきっと私の方がいいはずだし!!!

こんなふうに結愛には毎回からかわれるけど、私は絶対に彼のことだけは好きになりたくなかった。

私の中で、橋本涼はいい男というより、ライバル。
負けたくない存在で。

いつからか、なぜか彼に対して強い対抗意識が芽生えていた。

それはみんながもてはやすからなのか、テストでいつも張り合うからなのか分からないけど……。

彼とは仲良くならる気がしなかったし、特に関わることも無いだろうと思ってた。

だけど、その予想はある事をきっかけに見事にくつがえされた。

そして、その日は突然やってきた＿＿＿。