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2020/02/17

第8話

卒業③


校舎裏は、誰もいなかった。

それもそうだろうと思う。卒業式直後、みんなが一番盛り上がっているような時にわざわざ校舎裏に来ようとする人なんていない。告白でもなければ。

しかし、その告白をする人も今はいないようだ。

向かい合って立ち、私は率直に聞いた。

「何?話って」

「……俺。お前のことが好きだ」

「…………どうしたの?」

思考回路が読めない。話はどこいった?

「だから、お前はまだ早いとか、言うかもしれねぇけど



俺と結婚してください」



世界から音が消えた。

私は、真剣そのものの顔をする遼介に目を奪われて――そして言った。



「嫌だ」


「は!?え、なんでだ!?」

「私、大学行きたいし。遼介も行くんじゃなかった?頭いいとこ」

「…………」

遼介が虚をつかれたような表情で黙り込んだ。

待って何その反応。まさか考えてなかったとか言わないよね。私が大学行くこと。

「……悪い。さっきの一旦なしな」

かああ、と赤くなる顔を遼介が片手で覆って隠した。

……考えてなかったのか。

私は恋人のアホさに声も出なかった。

「いや……考えてなかったわけじゃないんだよ、多分。そうじゃなくて、俺一人暮らししてるだろ?それでお前、たまに俺ん家来たりしてるじゃねぇか。
なんか、俺が学校終わって帰った時……お前がいたらいいな、って思うんだよ。結構、毎日」

日本語がおかしいのは見逃すとして、ちょっと可愛いって思ってしまったんだけどどうしたら。

私まで照れてきて、あぁもう、と誰宛でもない言葉が自分の中に浮かんでくる。

「大学卒業したら……22歳か」

遼介がふと呟いた。

「んー……うん、そうなるね」

「じゃあ、それまで待ってろ。4年、な」

ごく当たり前のことのように遼介は言った。

嬉しそうな、楽しみにするような笑顔。普通は私がそれをする側だと思うんだけど、実際にしているのは遼介で。

……とことん、少女漫画と正反対だ。

こんなの、笑わずにいられない。

「待ってる。だけじゃなくて、会いにも行くから。遼介も来て」

「――あぁ!」

飛びつくように抱きしめられ、強く抱きしめ返す。

温かい腕の中で、私は深い幸福感に満たされていた。