空がオレンジ色に染まってきたのを見て、私は呟いた。
「そろそろ終わりかな」
「だな。
なぁ、トイレ行ってきていいか?」
「いいよ。ここにいるね」
手を離して、歩行者の邪魔にならないよう端に避けてスマホをしつつ待つ。
二年の記念日だけど、いつも通り普通だったな。世のカップルって記念日をどうやって過ごしてるんだろう。由麻の漫画では大抵プレゼントし合ってたけど……。
ちょっと調べてみよう。
そうして出てくる世の彼氏のイケメン具合に心の中で軽くビビったり、マジかと笑っていたりしていると、前方から「あなた!」と声がかかった。
顔を上げると、妙に緊張した面持ちの遼介。
「ん。おかえり」
「お、おう」
「……すごいぎくしゃくしてるけど、何か隠してるの?」
ギクッ!と遼介が全身で動揺した。
いや――わかりやすすぎ。本当隠し事下手だな。
「な、何でもないぞ」
遼介の視線が明後日を向く。その時、遼介がいる方向から“がさり”と音が鳴った。
……ん?
「何か持ってる?」
「!!――お、まえなぁ……その変な鈍感なんとかしろよ……」
「変な鈍感って何。で、持ってるんでしょ?何なの?」
「……はぁ。ムードの欠片もねぇな」
ため息をついて、遼介は背中の後ろに隠していた右手を体の前に持ってきた。
その手に握られていたのは――。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。