――……あ、と、スマホのロック画面を見て思った。
今日は、私が遼介と付き合って二年目の記念日だった。
「……早いな」
呟いた頃、スマホが手の中で振動を始めた。
表示される名前は。
「はい」
『やっほーあなた。交際二年おめでとう』
「ありがとう、怜(れい)」
幼馴染みの初崎(はつざき)怜。まぁ、幼馴染みって言っても、保育園が一緒で、高校で再会したくらいのものだけど。
あと、お互いがお互いの初恋相手。
『今日の午後からデートするんでしょ?楽しんでね』
「うん。……そう、ずっと聞きたかったんだけど」
『ん?何?』
「私が“変わってない”ってどこが?」
思い返せば、怜があの「れいくん」だと知る前から怜は“変わってないね”と私に言っていた。
自分で言うのも何だが、保育園児の頃の私はよく喋ってよく笑うかわいい(愛想がいい)子だった。しかし今はどうだ。
・声を上げて笑うことがほとんどない
・そもそもそんなに笑わない
・話すより聞く派
共通点一個もなくない?
『……どこがって……全部?』
「全部!?」
それはおかしい……!「全部変わった」ならわかるけど、「全部変わってない」はない!!
『あはは。そういうところだよ』
「……よくわからない」
『あなた。飾らないのが、あなたのいいところだよ。変に女の子になろうとしなくてもあなたは充分女の子だ。あとね、遼介といる時は結構笑ってるよ?だから、不安にならなくて大丈夫』
静かな声が電話越しに響いてくる。私はふっと笑ってしまった。
さすが、怜は何でもお見通しだ。
「……ありがと。楽になった」
『いいえ』
少し微笑み合って、軽い談笑をしたあと電話を切った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。